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「計測技術」とは?これから必要となる技術や学び方を解説

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計測は全ての産業において、品質や生産量を定量的に示すための基盤技術です。

そして、近年のIoTの普及や産業のグローバル化に伴って活用の場が更に増加し、測定結果の信頼性(正しさ)を担保するための計測技術へのニーズが高まりつつあります。

一方で、計測技術はその専門性の深さと対象の広さから全容がつかみにくい分野でもあります。ここでは計測技術を概観し、合わせてその学び方についても紹介していきます。

そもそも計測とは

計測とは対象の特徴や状態を表す量を取得することであり、次の二つの技術がベースとなっています。

  • 直接見えない量を、電圧などの定量的に扱える量に変換する
  • 得られた量を、基準と比較して、公的に保証された値付けを行う
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新しい技術分野での開発成果の評価や生産現場での製品の品質・物量の保証など、正しい量を測定することは業種によらず全ての産業において必須であり、そのためにはこうした計測の特長が重要になります。

計測と測定の違い

計測という行為には、例えば、製品の性能の特性を知りたい、出荷される石油の量を正確に計量したいなどの達成したい目的が伴いますが、規格上の定義では、次のように「計測」という用語にはこうした目的を達成することまでが含まれています。(JIS Z8103 「計測用語」)

計測と測定の違い

  • 測定:ある量を、基準と比較して測定値を得ること
  • 計測:測定手段を検討・実施して目的を達成すること

つまり、測定値を得ることが「測定」という用語であるのに対して、「計測」は目的に合わせて「測定」を使いこなすという点を含んでいる概念であることになります。

例えば、対象の長さを測る時に、物差しを用いるのか、マイクロメータを用いるのか、マイケルソンの干渉計を用いるのか等様々な選択肢がありますが、必要とされる精度、コスト、使われる環境や測定者の技量など、達成したい目的に合わせてどれを選択し、測定結果をどのように利用するかという点までが「計測」という技術には含まれているということを表しています。

計測技術としてセンサ技術や測定器がクローズアップされがちですが、実用面では、こうした使いこなしの部分が重要となりますので、ご注意下さい。

計測技術の広がり

計測は対象の量を得ることが出発点ですので、次のような様々な量の変換技術が基盤となります。

  • 機械量:長さ、変位、速度、加速度、振動、力、歪みなど
  • 物理量:温度、圧力、流量、光、音響など
  • 電気量:電圧、電流、抵抗(インピーダンス)、電力、周波数など

このように多種類の量を扱う変換技術ですが、以下の点から、それを使いこなす上では更に広い技術分野についての知見が必要となり、そのことが計測技術の全容をつかみにくくする一因となっています。

□ 測定量の変換先が多岐に亘る(機械量、電気量、デジタル値・・・)

□ 物理法則・物理効果・素材の特性など、非常に多様な技術が変換に応用される

□ 対象となるアプリケーションは全ての産業分野にまたがり、また設計を含む全てのサプライチェーンに関係するが、それぞれの場面で適した測定手段が異なるため、アプリケーションそのものと測定手段の得失についての知識が必要となる

・測定量の種類、範囲、使われ方などによって使える変換方法が限られる
(例:熱電対は種類によって、測定できる温度範囲が異なる)

・測定環境の状態や、対象の状態によって、測定値が影響を受ける
(例:標準測定範囲外では、測定器は精度保証されていない)

・測定行為によって、対象に影響を与え、正しい値が得られない
(例:マイクロメータで柔らかいものの長さを測ると、測定圧で変形し、値が変化する)

正しい測定値とは

計測では正しい測定結果が得られることが求められます。その際、精度の高い測定器(手段)を用いることはもちろんですが、前項から分るように以下が必要になります。

  • 測定器の機能・仕様を正しく理解し、その範囲で測ること
  • アプリケーションを理解し、それに適した測定器を用いること

こうした測定器以外の影響があることから、その計測によってどれほどの正しさ(信頼性)が得られているのかを把握するためには、何が基準であり、影響の積み重ねでそれがどの程度になっているかを見積もる技術が必要となります。

この見積りを行うための技術的な基盤となっているのが、近年使われることが増えている「不確かさ」という考え方です。

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この考え方を用いることで、従来の「誤差」をベースとした「精度」という考え方のあいまいさを除き、厳密に測定結果の信頼性を計算する方法を提供することが可能となります。

このことは、単に社内で使う測定値の信頼性が得られるだけではなく、外部に対してそれを保証することで自社の技術力をアピールする等の副次的なメリットがあることから、企業も活用を進めています。

但し、実施に当たって行う計算は複雑であり多くの工数を要する、実施者に計測についての高い知識・スキルが求められるなどといった点が実用面での課題となっています。

計測技術の学び方

これまで述べたように、計測は広い分野の知識がベースとなっていることから、学ぶための道筋が分りにくい技術です。

そのため、まずは分野に依存しない計測技術で共通に用いられる基本的な知識を身につけ、その上で自身の関連する分野のアプリケーションでそれを応用する形で、必要な技術について深掘りしていくという学び方がもっとも効果的です。

基本的な知識として考えられるものを以下に挙げます。これらについては、個々の言葉を覚えるのではなく、その考え方を理解することが応用する際に役立っています。

  • センシングの一般知識
    (例:どのような量が測定可能か、どんな変換原理があるか、どのような形式があるかなど)
  • 測定手段・方法の一般知識
    (例:直接/間接測定、偏位法/零位法/補償法/置換法の違いや得失など)
  • 計測や測定器の用語、考え方、仕様の意味の理解
    (例:分解能、確度、測定範囲、動作条件、動特性など)
  • 目的に即した計測系の設計手法
    (例:計測仕様の作成、システムで得られる精度見積りなど)

計測をとりまく環境

ビジネスのグローバル化に伴い、流通する製品の品質や量をより正確に計測し保証していくことに対するニーズは常に高まり続けています。

それに伴って国際的な校正体系の整備も進化し続けており、同時にISO9000「品質マネジメントシステム」で記載されているように、個々の企業に対しても計測系を管理する要求レベルも上がっています。

また、IoTの発展や、AIをベースにしたビッグデータ解析などの活用が広まり、我々の身の回りでも画像センサをはじめとする様々なセンサや計測手段が急激に増えています。

そうした場では、自動運転車で顕著なように計測結果が安全性に直結し、かつ従来よりもはるかに複雑な条件下で用いられることから、計測結果の正しさが求められるのと同時に「いつでも、どこでも信頼性のあるデータが得られることを保証する」という、更に一段高い要求が顕在化しつつあります。

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こうした流れの中では、自社の活動について示す様々な値についての正しさ、信頼性の高さを示していくためのキー技術として計測技術の重要性が増していくと考えます。

計測技術についてより詳しく知るためには

ここまで、これから計測技術が産業の基盤技術として重要になっていくこと、そしてそれを学んでいく上では、個々の量を測定する技術ではなく、俯瞰的に計測技術全般のベースとなる考え方を先ず身につけることが重要であることを示してきました。

SATの技術者スターター「計測技術」講座では、こうした観点に立ち、センシング技術、測定技術、計測技術及び、ベースとなる不確かさや校正、計測系を検討するプロセス等を段階的に学んでいけるように構成されています。

具体的な講座プログラムは以下の通りになっています。

  1. 計測とは
  2. センシング技術
  3. 測定技術
  4. 測定の不確かさ
  5. 測定器の校正、規格
  6. 計測技術

また、分りにくいところは何度でも視聴して確認できるというオンライン受講というスタイルと相まって、着実に計測技術の基礎を身につけるのに適していると考えます。計測技術を学ぶ際は、是非ご活用下さい。

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