30年ぶりに新設 電気通信工事施工管理技士は電気通信工事の上級技術者!
電気通信工事施工管理技士とは、2019年度に30年ぶりに新設された施工管理技士資格で、電気通信工事の施工計画を作成したり、工事の工程管理、品質・安全管理をしたりする資格です。
電気通信工事とは、電気通信線路、電気通信機械、TV電波障害防除設備、情報制御設備、放送機械、防犯カメラ、火災報知器、情報通信設備などの設備に関わる工事です。
簡単に言うと「固定電話」「携帯電話」「インターネット」「TV・ラジオ」を使えるようにするために基地局の設置や通信網を整備するための設備工事や、事業所内での有線・無線のLANを整備するための工事も含まれます。
電気工事と同じく電気通信工事においても施工管理技士が工事において不可欠な資格と言えるでしょう。
通信技術が日々進化とそれに伴う設備の更新が切り離せない現状を考えると、今後ますます必要とされる資格です。電気工事施工管理技士と同じく通信の分野もなくなることはないので、通信工事に携わる方には目指していただきたい資格です。
仕事内容 電気通信工事施工管理技士が行う主な仕事内容は3つ!
施工管理技士は、設計図通りに工事が実施され予算内に安全に進めるために、施工計画・工程管理・安全管理・品質管理を行うのが主な業務です。
つまり電気通信工事施工管理技士が行う主な仕事内容は次の3つが主となるでしょう。
- 電気通信工事の施工計画作成
- 電気通信工事の工程管理
- 電気通信工事の品質・安全管理
01
電気通信工事の施工計画作成
- 発注者との連絡調整
- 役所等への申請書類の作成、申請業務
- 工事を行う社内技術者や下請け業者の選定、工事日程や内容の指示
- 現場やその周辺の調査
- 施工図の作成
- 工事の見積
施工計画を立てるときには、いざ工事が始まった時に余分な工事が発生して予算オーバーや工程の遅れがでないよう、事前に発注者との間で設置機器などのスペックの確認や不明な点の確認を念入りにすることが重要です。
02
工事の工程管理
- 工程作成
- 工程管理
- 電気資材の発注
基地局の設置の場合などは自分たちの作業をメインに工程を組むことができますが、事業所内の通信設備の工事はお客様の都合で工程が左右されることもあります。
途中で調整する必要があっても柔軟に対応できる工程の作成と管理が必要です。かなり大変ですが、ここが施工管理技士の腕の見せどころ、この仕事の醍醐味とも言えるでしょう。
03
工事の品質・安全管理
- 現場での作業員の監督・指導
- 安全管理
近年、特に安全管理が重視されています。
現場の巡回を行う時には施工や技術のみにならず作業員の作業方法や安全意識にも注意を向けることが大事な仕事の一つです。
特に屋外での基地局設置や狭所での通信網の整備などでの作業が多い職種ですので現場での安全管理は重視すべき分野です。
このように、施工管理の仕事は工事の発注者、設計者、工事現場に従事する多数の作業員、役場等の検査員…など、とても大勢の人と関る仕事になります。
打合せ業務などもあるので、他業種の人たちとの良好な関係を保てるコミュニケーションスキルを日々磨いておくことも資格を活かすために必須といえるでしょう。
仕事の規模が違う 電気通信工事施工管理技士には1級・2級がある
どちらも電気通信工事の施工管理・監督が主な仕事で仕事内容に違いはありません。一級と二級の違いは、資格取得者がいる会社の請け負える仕事の規模になります。
一級電気通信工事施工管理技士とは
一級の資格取得者は次の仕事も行えます。
「一般建設業の営業所ごとに置く専任技術者」、「現場ごとに置く主任技術者」、「特定建設業の営業所ごとに置く専任技術者」、「監理技術者(別途資格者証の取得が必要)」です。
特定建設業とは、簡単に言うと発注者から直接工事を受注できる元請けになれる許可がある建設業です。
一級があればゼネコンなどの規模の大きな建設会社で専任技術者として働くことができるので高収入も見込めるでしょう。
監理技術者は特定建設業者が元請けとなった合計4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の下請契約を締結した工事で現場の指導監督を行えます。大きな現場での監督ができるということです。
つまり、一級を取得するなら、どんな規模の電気通信工事でも管理・監督ができるということです。そして大規模な工事を請け負う建設業の会社には不可欠な存在なのです。
大きな仕事をしたい、キャリアや収入をアップしたいという方は、ぜひ一級の取得を目指しましょう。
二級電気通信工事施工管理技士とは
電気工事の施工管理に加え、二級ができる仕事の内容は次のとおりです。
「一般建設業の営業所ごとに置く専任技術者」、「現場ごとに置く主任技術者」です。
二級では特定建設業での専任技術者や監理技術者になることはできません。
これが一級と二級の唯一で大きな違いといえます。
受験資格があれば、初めから一級を取得した方が有利でしょう。しかし、一級の受験資格はないが二級ならあるという方は、一級の受験資格が得られるまで待たずに、まず二級を取得して実務経験を積みましょう。
新設の資格ですから、二級とはいえ取得しているならキャリア面でも収入面でもメリットは大きいと考えられます。
一次と二次とは? 電気通信工事施工管理技士の受験方式
施工管理技士の試験は1級・2級ともに「第一次検定」と「第二次検定」の二段階に分かれています(2020年度まではそれぞれ「学科試験」と「実地試験」の名称で実施)。
両方に合格することで、資格の取得となります。
第一次検定は四肢択一形式が基本で、選択肢の中から正答を1つを選び解答をします。
ただし、応用能力問題では1問につき2つの解答を選択する必要があります。
一方、第二次検定は記述式で解答をする必要がありますので、文章力も必要となります。
なお第一次検定に合格すると、電気通信工事施工管理技士補の資格がえられます。
土木業界の深刻な人手不足を少しでも解消するために、新たに設けられた資格になります。
1級の施工管理技士補を取得すると、監理技術者の補佐として従事することが可能になります。2級の施工管理技士補は実務的な役割はありませんが、転職に有利になることはあるので、取得価値は十分にあると言えます。
1級電気工事施工管理技士の受験概要
1級電気通信工事施工管理技士では、第一次検定と第二次検定でそれぞれ別の受験資格があります。
学歴や所持している資格で細かく定められているので、下記の表で確認をしてください。
1級電気工事施工管理技士 第一次検定の受験資格
次のイ、ロ、ハ、ニ、ホのいずれかに該当する者
区分 | 学歴又は資格 | 電気通信工事施工に関する実務経験年数 | ||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 | |
短期大学 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6月以上 | ||
高等学校・中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6月以上 | ||
その他の者 | 15年以上 | |||
ロ | 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者 | 6年以上 | ||
ハ | 高等学校 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験1年以上を含み、かつ、5年以上の実務経験の後専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む) | ||
ニ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 高等学校 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後8年以上 | 卒業後9年6月以上 |
その他の者 | 13年以上 | |||
ホ | 2級の第二次検定に合格した者 |
1級電気工事施工管理技士 第二次検定の受験資格
次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者
イ 1級電気通信工事施工管理技術検定・第一次検定の合格者(ただし、(1)ホに該当する者として受検した者を除く)
ロ 1級電気通信工事施工管理技術検定・第一次検定において、(1)ホに該当する者として受検した合格者のうち(1)イ、ロ、ハ、ニ又は次のⅰ、ⅱのいずれかに該当する者
区分 | 学歴又は資格 | 電気通信工事施工に関する実務経験年数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||||
ⅰ | 2級第二次検定合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上 | ||||
2級第二次検定合格後5年以上の者 | 合格後5年以上 | |||||
2級第二次検定合格後5年未満の者 | 高等学校 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6月以上 | |||
その他の者 | 14年以上 | |||||
ⅱ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 2級第二次検定合格者 | 合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上 | ||
合格後3年未満の者 | 短期大学 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後7年以上 | ||||
高等学校 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後7年以上 | 卒業後8年6月以上 | ||||
その他の者 | 12年以上 |
2級電気工事施工管理技士の受験概要
2級電気工事施工管理技士 第一次検定の受験資格
試験度中における年齢が17歳以上の者
2級電気工事施工管理技士 第二次検定の受験資格
次のイ、ロのいずれかに該当する者
イ 2級電気通信工事施工管理技術検定・第一次検定の合格者で、次のいずれかに該当する者
学歴 | 電気通信工事施工に関する実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科の卒業者 | 指定学科以外の卒業者 | |
大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) |
卒業後1年以上 | 卒業後1年6月以上 |
短期大学 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) |
卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専修学校の専門課程卒業者 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 |
その他の者 | 8年以上 | |
電気通信事業法(昭和59年法律第86号)による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者 | 1年以上 |
第一次検定免除者
- 令和元年度以降の学科試験のみを受験し合格した者で、第一次検定の合格を除く2級電気通信工事施工管理技術検定・第二次検定の受検資格を有する者(当該合格年度の初日から起算して12年以内に連続2回の第二次検定を受検可能)
- 技術士法による第二次試験のうち技術部門を電気電子部門又は総合技術監理部門(選択科目を電気電子部門に係るものとするものに限る。)とするものに合格した者で、第一次検定の合格を除く2級電気通信工事施工管理技術検定・第二次検定の受検資格を有する者
難易度は高い 1級電気通信工事施工管理技士の合格率
1級電気通信工事施工管理技士は、新設の資格ですが電気通信工事の分野の上級資格であり、受験資格で求められる学歴や資格・経験に伴った知識を身に着けていることが前提になっていることから比較的難易度は高い資格と考えられます。
ただし知識や実務経験をしっかりと積み上げ、試験のために時間を取って計画的な勉強をするなら合格は難しくないでしょう。
1級一次合格率平均データ
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1級電気通信工事
施工管理技士
学科(一次)の
過去3年の合格率
年度 | 総受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年度 | 7,300 | 3,982 | 54.5% |
2021年度 | 8,076 | 4,730 | 58.6% |
2020年度 | 8,532 | 4,190 | 49.1% |
2019年度 | 13,538 | 5,838 | 43.1% |
1級二次合格率平均データ
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1級電気通信工事
施工管理技士
実地(二次)の
過去3年の合格率
年度 | 総受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年度 | 5,630 | 2,108 | 37.4% |
2021年度 | 6,147 | 1,852 | 30.1% |
2020年度 | 6,707 | 3,307 | 49.3% |
2019年度 | 5,781 | 2,860 | 49.5% |
計画的な勉強が必要 2級電気工事施工管理技士の合格率
2級電気工事施工管理技術者にも同じことが言えますが、受験資格にある経験年数が少なくてよいので、記述式の施工管理法の試験の勉強が難しいと考えられます。
とはいえ、会社の上司や先輩に経験を聞いたり、講習会などに参加して、知識と経験を積み重ねて計画的な勉強をするなら合格は遠くないでしょう。
2級一次合格率平均データ
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2級電気通信工事
施工管理技士
学科(一次)の
過去3年の合格率
年度 | 総受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年度 | 3,074 | 1,818 | 59.1% |
2021年度 | 2,568 | 1,807 | 70.4% |
2020年度 | 2,764 | 1,835 | 66.4% |
2019年度 | 3,793 | 2,425 | 63.9% |
2級二次合格率平均データ
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2級電気通信工事
施工管理技士
実地(二次)の
過去3年の合格率
年度 | 総受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年度 | 3,557 | 1,265 | 35.6% |
2021年度 | 4,725 | 1,420 | 30.1% |
2020年度 | 4,101 | 1,391 | 33.9% |
2019年度 | 4,790 | 2,007 | 41.9% |
就職と独立 有資格者が人手不足なので就職や転職ではかなり有利!
新設の資格なので業界では有資格者が不足しています。ですから就職や転職ではかなり有利な資格になります。
就職先は大手ゼネコンから電気通信工事会社までと多岐にわたり、これから自分がしてみたい工事を請け負っている会社を選ぶとよいでしょう。CATVなどの工事部門でも必要とされると思われます。
他の施工管理技士と同様に、独立もできる
他の施工管理技士の資格と同じように主任技術者や監理技術者になれる資格ですから、現場で実務経験を積むなら現場監督として独立を考えることもできます。 ただし、会社に雇用されていない場合にはいくつかの制約もでてきます。
- 建設業法に基づき監理技術者や現場代理人にはなれない
- 公共工事もほぼできない
この資格は建設業許可の申請が可能となるので、他の通信工事の資格も持っていて工事経験もある方は電気通信工事会社を設立することができます。
どちらにしても独立を考えるなら、
- 施工管理技士としての実務経験
- コミュニケーションスキル
- 学習意欲
が不可欠でしょう。
今の会社や取引先からの信頼を得て、良好な関係を築いておくと独立後に仕事の受注に苦労せずに済むでしょう。
通信技術は日々進歩しています。今までは会社にいれば自然と入ってきた情報が入ってこなくなりますので、意欲的に情報を得て学ぶ意欲がないと取り残されてしまいます。
独立前から自分で情報収集と学習をする習慣をつけることをおすすめします。