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プラスチックの基礎とは?歴史や加工方法についても解説!

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みなさんは、プラスチックがどのようなものかはご存知でしょうか。

金属やガラスと比較した場合、プラスチックは独特の特性を示します。これは、分子構造という本質によるためであり、この基本からの理解が最重要点となります。

この点が理解できれば多岐に渡るプラスチックの種類や成形加工法、さらにはプラスチック活用で守るべきポイントも理解できますので、ぜひ原理メカニズムから理解しましょう。

プラスチック活用のメリットとデメリット

身の回りにはプラスチックでつくられたものであふれています。まずは朝の洗面所、歯ブラシやヘアーブラシ、お洗濯の洗剤や柔軟剤のボトル、洗濯物を干すハンガーや洗濯ばさみ、スーパーで購入したお肉やお野菜の包装ラップやトレイ、お出かけや会議中に便利なペットボトル飲料など枚挙にいとまがありません。

プラスチック活用のメリットは何といっても軽いことです。また衛生的で手触りもよく、特別な処理が無くても実用上問題のない外観品質です。総じてコスト的にも安価となっています。

さて、ここのところカーボンニュートラル、脱炭素の話題を聞かない日はないほど重要なテーマとなっています。二酸化炭素などの温室効果ガスが地球を覆うことで気温や海水温を上昇させるとの学説が有力で、温室効果ガスの発生抑止が求められています。プラスチックの多くは石油から作られていますので、使用後焼却処分とすると二酸化炭素になってしまうというデメリットがあります。

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そのため、プラスチックの利点を生かしながら、いかに脱炭素に貢献するかがポイントとなっています。

では、プラスチックとはどのようなものなのでしょうか?

プラスチックとは

プラスチックは樹脂とも呼ばれます。特に合成樹脂を指し示しています。

樹脂とは元々は松脂やコールタールのような天然樹脂のことでしたが、それらよりも圧倒的に加工性・利便性の高い合成樹脂が普及したため、いまではプラスチックという言葉は合成樹脂を示すようになっています。

合成樹脂の本格的な普及は第二次大戦後です。ポリアミド(通称ナイロン)が衣料品に使い始められます。PETボトルは1977年の醤油用途に始まり、1982年からは清涼飲料水へと拡大していきます。

1980年代後半からは自動車のバンパーの主流はポリプロピレン樹脂製となります。

それぞれ、安価で使いやすい衣料品、ガラス瓶よりもはるかに軽いボトル、軽くて意匠性にも優れる自動車のバンパーとして普及し現在に至っています。

プラスチックは炭素と水素でできている

少し専門的になりますが、プラスチックは主として炭素と水素で構成され、その種類によっては酸素、塩素、窒素を含みます。プラスチックは別名で高分子とも呼ばれます。炭素と水素を中心に数千個から10万個にも及ぶ原子が結合し高分子を形成しています。

高分子は、金属やガラスなどの無機物とはその構成が全く異なっており、この差異を理解することは、本質的な物質活用の面で大変に重要となります。

プラスチックを構成する原子の種類と高分子形態の組み合わせは多岐に渡ります。このためプラスチックの種類も実に多種に渡ります。

プラスチックは大きく2種類ある

プラスチックの種類は2種に大別されます。熱可塑樹脂と熱硬化樹脂です。

熱可塑樹脂

熱可塑樹脂とは、プラスチックを加熱することで溶融するプラスチックです。

ポリエチレンやポリプロピレン、前述したナイロンやPET樹脂などです。熱可塑樹脂はさらに、結晶性樹脂と非結晶樹脂に分けることができます。結晶性樹脂は冷却固化する際に、高分子の一部が規則性を持って配列、すなわち結晶構造を取ることとなります。結晶性、非け晶性では、加工の際の挙動も、出来上がったプラスチック成形品の性質も異なるものとなります。この差異を理解することでより本質に則った活用が可能となります。

熱硬化樹脂

一方で、熱硬化樹脂とは、構成する材料同士が熱エネルギーなどをトリガーとして相互に化学結合する樹脂です。

比較的低分子成分が巨大な高分子へと変化します。低分子成分は粘度が低い液体です。水をイメージしてみてください。狭い隙間にも容易に染み込ませることができるので、染み込ませた後に加熱し熱硬化反応で固体であるプラスチックへと加工することが可能です。モーターの巻き線の固定などは代表的な熱硬化樹脂の活用例です。

熱可塑樹脂、熱硬化樹脂ともに、樹脂に無機成分を複合することが可能です。無機成分と複合することでプラスチックの欠点である剛性を向上させることができます。

無機成分としては、繊維状のガラス繊維や炭素繊維、球状の炭酸カルシウム、鱗片状のタルクなどがあります。複合化した樹脂を強化樹脂と呼びます。

ガラス繊維強化プラスチックや炭素繊維強化プラスチックという言葉は皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?複合化は大変に有用な活用方法ですが、同時に樹脂と無機成分の特性、さらに複合化された樹脂のミクロ構造の理解無くしては正しい活用が困難となります。

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プラスチックの基本的な構成と加工された成形品の構造、そしてそれぞれの特性を確実に理解することが大変に重要といえるでしょう。 

プラスチックの加工方法について

プラスチックの種類は多岐に渡ること、また、複合化、強化プラスチックとすることで特性が変化することを説明してきました。これにともない、プラスチック製品の作り方、成形加工法も多岐に渡ります。

熱硬化樹脂の加工は、反応させる2種の物質の混合からとなります。

この混合は、あらかじめ樹脂材料メーカーで混合するものと成形直前に混合するものに大別されます。無機物質との複合化法も多岐に渡るところです。たとえば、材料メーカーにて炭素繊維で織物を作り、そこに硬化前の熱硬化樹脂を含浸させた中間材料を製造します。

成形メーカーではこの中間材料を金型でプレスしながら熱を掛け硬化させて成形品を得ます。別の例として、ボートや浴槽の加工法を紹介します。ガラス繊維を型に敷き詰め、ローラーや刷毛で混合済みの反応前熱硬化樹脂を染み込ませ、最後に加熱し成形品を得ます。

熱可塑樹脂の場合、一般的には材料メーカーで無機物と樹脂を複合化します。

溶融状態の樹脂にガラス繊維やタルクなどの無機物を混錬します。この複合化した樹脂を冷却し数mm程度にカットしペレットと呼ばれる熱可塑樹脂の原料とします。なお、無機物を複合していない非強化の樹脂も同様のペレットで供給されます。

成形メーカーではまずこのペレットを加熱し樹脂を溶融させます。熱可塑樹脂の成形加工法で最も一般的な射出成形法は、溶融した樹脂を高圧で金型内に流し込み、冷却し成形品を得ます。

熱プレス加工の場合は、まずはペレットを溶かし平板を作ります。ついで、再度この平板を外部から加熱し軟化させ、上下から金型でプレスし成形品を得ます。

最後にひとつ、身近な成形加工の例をご紹介しましょう。歯医者さんでのレジン治療を受けた方も多いと思います。これはまさに熱硬化樹脂による成形加工です。硬化前の粘度状樹脂を歯に詰めて、可視光(ないしは紫外線)を照射することで硬化反応を促進します。

このように、樹脂の種類、成形加工法ともに多岐に渡り複雑なのです。

プラスチックと地球環境

近年では、地球温暖化の視点でプラスチックの適正利用が求められています。

PETボトルのリサイクルに代表されるような同じ製品へと使い続けるという方策にとどまらず、原料物質の油成分にまで分解し再度高分子を形成するケミカルリサイクル、あるいは非石油系の植物由来のプラスチックなど、多種多様な方策が試みられており、実用化も拡大中です。また、万が一環境に流出した場合には自然界で分解されるといった生分解プラスチックも実用化されています。

リサイクルよりもさらに広い視野での取り組みであるサーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方も一般化しつつあります。

すなわち、プラスチック製品の設計段階から再利用などを視野に入れ資源の効率的・循環的な利用を図るとの考え方です。持続性を確保するためには、経済的に成り立つバリューチェーンを確立する必要もあります。

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利便性の高いプラスチックを適切に活用し続けるためには、俯瞰的に地球環境問題への対応を理解する必要があるでしょう。

よりプラスチックについて詳しく学ぶには

ここまでご説明してきた内容から、プラスチックは高分子であるがゆえに金属やガラスとは全く異なった物質であることにお気づきのことでしょう。プラスチックとその成形加工法を理解するためには、物質の構成とそれにより発現する挙動メカニズムの理解が重要です。

SATの技術者スターター講座100『はじめて学ぶプラスチックと成形加工』では、その副題である「~原理・メカニズムの本質と、活用現実の理解~」が示すように、原理メカニズムから理解できる内容となっています。

したがって、プラスチック関連分野への初学者の方はもちろんのこと、金属系の設計者の方などが軽量化等でプラスチックへと領域拡大される際などにも役に立つ講座です。

すべてオンラインで受講でき、写真や図表を多用して視覚的にも理解しやすい構成になっています。

入門編ながら、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の基礎の解説や、CAE・シミュレーションといったデジタル技術活用にも言及しています。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった最新かつ今後重要となる内容にも一章を割いています。

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30年に渡り、トヨタ自動車やサムスンでプラスチック材料の開発と成形加工実務に従事してきた、高分子物性工学の専門家の博士による講座です。
論理的かつ実用的な講座となっています。プラスチックの基礎を学びたい方には、ぜひお勧めします。

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