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金属材料とは?構造材や機能材の違いなど基本を紹介!

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金属は工学全般に密接にかかわる分野であり、基礎から応用、開発から製品加工など、あらゆる局面で知識を要求される分野です。

最近ではナノテクノロジーを応用した合金や研究開発によって、新しい素材や機能を獲得するものが生まれています。

ここでは、学生からエンジニアまで幅広い層を対象に、金属材料の総合的な概要を紹介します。

金属材料とは

金属材料とは、鉄鋼材料、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金、チタンおよびチタン合金、タングステン、ジルコニウムとジルコニウム合金など、金属を主成分とする材料です。

そうした金属材料を単独に使用する場合と、複合材料のように異種の金属材料や非金属材料を張合せるなどして使用する場合とがあります。

金属材料は無機材料や有機高分子材料などのいわゆる非金属材料に比べて、一般に、製造、加工が容易で弾性係数、強度が大きく、延性、靭(ねば)さ、すなわち靭性に優れ信頼度が高いです。また、熱伝導度、電気伝導が大きく金属光沢を有します。

無機材料に比べれば、融点は一般に低く、耐熱性、耐食性に劣りますが、合金元素の添加、熱処理などによってかなりの耐熱性、耐食性を付与することができるので、土木、建築、機械、化学、運輸・交通、発電など多分野で高温から低温にいたる広い温度領域において多く使用されています。

金属材料の性質

金属材料の特徴は、他の元素を添加して合金とすることによってさまざまの性質を持たせることができることです。

鋼は鉄を主体とし、炭素を主な添加元素とする炭素鋼ですが、炭素量をたとえば0.1%から2%まで変えると強さなどの性質が大幅に変化します。さらにこの性質を改良するために、いろいろの元素を添加した特殊鋼(合金鋼)が作られます。

このような合金化による性質の改良は、金属材料全体を通じて利用されています。金属材料の評価はそれが使用中にどのような性能を示すかによりますが、ここで重要なことは、その性能が使用形態までの製造履歴と使用中の環境の影響を受けることです。

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その理由は、これらの影響によって材料の内部の構造(金属組織)が変化し、それに伴って性質が変化するためです。この変化はとくに合金にしたときに顕著です。

一方、金属材料の大きな部分は、板、線、棒、管、形材などの一次製品に加工され、それを入手した利用者はさらに二次加工を加えて機械や構造物を作っています。

一次製品の製造においても、ただ寸法形状を仕上げているのではなく、溶解から造塊の条件、鍛造や圧延などの加工中の変形その他の条件、熱処理の条件などを制御し、金属組織を調整して金属の優れた特性を引き出すようにしています。

二次加工では鍛造、プレス加工、切削加工、熱処理、溶接などの方法が利用されますが、ここでも加工条件を制御して最終製品が所期の性質を持つようにしています。

金属材料の分類

金属材料はおおざっぱに構造材と機能材に分けられます。まずは構造材について解説します。

構造材

構造材は機械・器具、構造物などの主体構造となり、それに使用中に作用する荷重に耐え、それが所期の性能を示すように形状を維持します。このときには特に、強さと粘さ、耐環境性、加工性と価格が問題となり、金属材料はこれらのバランスが良いことに特徴があります。強さは耐えることのできる単位面積当りの荷重で表されます。

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したがって,強い材料を使用すれば部材の断面積を小さくでき、自重が小さくなることになり、構造物には高張力鋼が使用されます。

また,密度が小さく強い材料を選べばさらに軽くできることになり、航空機には高強度のアルミニウム合金やチタン合金が使用されます。

構造材は強さだけでなく、粘さが必要であり、これを兼ね備えているのが金属材料の特徴ですが、条件によっては脆性(ぜいせい)を示すものがあり、材料の選択と加工に注意が払われています。構造材には使用中の化学的環境に対する耐環境性も要求されます。

鋼は一般に大気環境中で容易に腐食され、防食が必要となります。アルミニウム合金には耐候性の良いものがあり、建築用材としても重要です。

海水やその他種々の化学物質に対する耐食性は金属材料によって大幅に異なるので、使用環境に応じた材料の選択が必要であり、とくに耐食性を重視した耐食合金があります。金属には耐熱性に優れているものもあり,特に高温強度や高温での耐酸化性を重視した耐熱合金もあります。

機能材

機能材は、金属や合金の化学的、物理的、電磁気的性質などを活かして利用するものです。

金属の特徴の一つは電気の良導体であることであって、送電線から小さな電子素子にいたるまで導電の役目を果たす用途に使われています。

また、合金化することにより電気抵抗を高め、電気抵抗素子や電熱材料としても使用されます。超電導材料、電気・電子機器の電気接点材料としても重要です。

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磁気的性質を示す材料も多く適用され、発電から小さな電子素子にいたる広範囲で活躍しています。また化学工業の優れた触媒となるものもあります。

金属の結晶構造について

結晶中の原子は、3次元的に規則正しく配列しています。結晶内の原子配列は、空間的に規則正しく配列している点を直線でつなぎ、3次元的な網目によって表すことができます。

この網目を「空間格子」と呼び、各直線の交点を「格子点」と呼びます。結晶に対し、空間格子で表したものが「結晶格子」です。結晶格子の全ての格子点は、平行でしかも等間隔に平面上に並んでいます。この一群の平面を「格子面」といいます。

格子面は、イギリスの鉱物学者、ウィリアム・ハロウズ・ミラー(William Hallowes Miller)によって考えられた指数によって表示でき、結晶構造によって金属材料が分類されています。結晶構造と材料の様々な性質が関連付けられ、その理解が材料科学の醍醐味でもあります。

金属材料の組織とは

金属材料の性質を左右する金属の組織について、金属の凝固と結晶の概念、合金の組織と状態図、格子欠陥・固溶体および金属間化合物、加工と再結晶、過冷固溶体からの析出、マルテンサイト変態などの基礎的事項を理解することが重要です。

今日の技術発展に、多くの金属材料が直接あるいは間接的に関っています。強度や電気伝導性、熱伝導性、圧延性、外観等、金属は材料への高度な要求を満たしてきました。

金属材料の多くの性質である引張強度、伸び、降伏強度、保磁力、熱伝導性、電気抵抗は、材料組織との関連が重要です。金属材料の組織観察は、材料組織と材料特性の関係性を知り、材料欠陥や破壊原因の推定ができる重要な検査手法です。

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材料の製造履歴、たとえば凝固や塑性加工、溶接、焼結などに応じて、特有の金属組織が形成されています。

金属材料をより詳しく学ぶためには

地球上に人類が誕生して以来、石器、青銅器、鉄器と時代が移り変わり、これらの金属が文明を表現して時代を特徴付けてきました。ことに20世紀は“物質文明”の時代であり、優れた機能を持つ新しい材料が次々と出現し、人類の生活を潤してきました。

例えば、20世紀前半に 発明された特殊鋼、高分子、半導体、セラミックスなどの多様な材料の出現は、18世紀の産業革命以来発展してきた鉄中心の基幹産業から、社会に密着した交通機器・生活機器・ エネルギー機器・通信機器などの民需産業へと拡大させ、これによって生活が豊かになり、大量消費社会へと移行する結果となりました。

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金属材料科学の領域として社会課題にどのように関わっているかと考えることは重要です。これはSATの技術者スターター講座100「金属」で詳しく紹介しています。鉄に注目した、元素機能と人類の発展についても金属材料科学の知識で一定の理解が進みます。

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