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バイオテクノロジーとは?基礎と応用を解説!

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バイオテクノロジーとは生物(bio-)に関する技術の総称ですが、細胞や遺伝子に関する最新の技術の本質は一般知識ではほとんど理解できません。

この記事では、新しい生物学の基礎を身につけ、さらに発展した分子生物学を効率よく学ぶ方法についても解説しています。

バイオテクノロジーとは

バイオ(bio-)は「生命」という意味を表す接頭辞で、biology(バイオロジー:生物学)やbiotope(ビオトープ:生態環境)のような多くの言葉に用いられます。

バイオテクノロジーの代表的な技術の一つとして「発酵」が挙げられます。例えば酒やチーズの製造は古代人が偶然に見つけた知恵に基づくものですが、これらの技術の背景にある微生物の代謝を利用するという手法が理解されるようになり、細菌や糸状菌を使って医薬品を含む多様な化合物を合成する技術が確立されています。

微生物以外の領域としては、植物や動物の品種改良について、昔は交配による試行錯誤を続けるだけでしたが、今日では細胞培養や遺伝子導入の技術が発展して、これまでには不可能とされていたような新しい品種が創造されています。

生物学の分野は20世紀後半における「DNAの二重螺旋構造」の発見以降に目覚ましい発展が続いており、「バイオテクノロジー」は医学・工学・農学などの広い分野における新しい技術革新を象徴する言葉となっています。

バイオテクノロジーが生かされている業界例

「オールドバイオテクノロジー」と「ニューバイオテクノロジー」という言葉を用いて、遺伝子操作以前と以降の技術を分けることがあります。

植物細胞の培養技術を応用して、ジャガイモ(ポテト)とトマトの雑種である「ポマト」のような、自然界では交配不可能な新しい雑種作出はオールドバイオの代表例です。新しい例では、世界的な食糧不足に備えて、大豆ミートに代表される植物性代替肉や家畜細胞由来の培養肉など、新規食品の開発にも細胞培養技術は必須のものとなっています。

食品業界では、 DNA解析を用いた発酵微生物品種の分類・同定など、伝統産業を引き継ぐ企業においてもニューバイオテクノロジーが採用されています。一方で、諸外国で生産されている遺伝子組換えトウモロコシやダイズは、家畜の飼料として日本でも大量に輸入されており、食糧確保に大きく貢献していると言えます。最近では、ゲノム編集技術を利用した食品生産も着実に進められています。

医薬品業界では遺伝子組換え技術が早期に導入されています。成長ホルモンやインシュリンなど、それまでは亡くなった人から抽出するしか方法が無かったものを遺伝子組換え大腸菌で製造することが可能となり、その後の多数のバイオ医薬品開発への応用に至りました。

バイオテクノロジーが必要な理由

地球規模の人口増加により、食糧不足、環境悪化、感染症蔓延等の危機が深刻になり、多方面の科学技術への要請の声が高まっています。

特にバイオテクノロジーは自然にはあり得ないような生物を創世することが可能な技術であり、成長力が顕著に高められた農作物、水産物、家畜の作出が可能となり、また環境汚染物質や地球温暖化の原因物質を強力に吸収するような植物、微生物の作出やバイオプラスチックの開発も考えられます。

さらには、感染症を媒介する蚊などの有害生物を駆除するための遺伝子操作や、ウイルス病を予防するワクチンの開発にもバイオテクノロジーは必須で、新型コロナウイルスに対応した新しいタイプのメッセンジャーRNAワクチンはその代表的なものとしてノーベル賞の対象にもなりました。

バイオテクノロジーの将来性

政府の産業構造審議会商務流通情報分科会バイオ小委員会は、「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』 」(2021年2月)の報告書を発表しています。

「第五次産業革命」とはバイオテクノロジーがIT/AI技術と組み合わされることによって産業構造のパラダイムシフトが起こることを目指すものですが、その報告書の引用によれば、2019年の調査で日本国内のバイオ産業は約57兆円の市場規模を有し、世界的にはOECDの試算(The Bioeconomy to 2030)で、バイオテクノロジーは2030年に加盟国のGDPに対して200兆円以上の寄与が予想されています。

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さらにマッキンゼー・グローバル・インスティテュートの試算で、今後2030年から2040年の間に、バイオ産業を介して年間2兆~4兆ドルの経済効果(世界全体)が誘発されるとなっています。

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この講座はバイオ関連企業の業務内容を大まかに理解するために、高校の「生物学」の復習から理系大学1〜2年生程度を対象とした遺伝学、生化学、微生物学などに関する基礎的な知識までを身に付けることを目標としています。

全体は7章で構成されていますが、それらの概要について順を追って紹介します。

<第1章:遺伝子工学>

遺伝子の物質的本体となるDNAの化学構造やメンデル遺伝学における遺伝子の機能的意義について解説し、遺伝子情報に基づき細胞内で特定のタンパク質が合成されるメカニズムを説明します。

遺伝子工学の基本となる遺伝子クローニングとは、大腸菌に外来遺伝子を導入して異種タンパク質を製造させるため、DNAを抽出し目的の部分を切断したりプラスミドと呼ばれる環状DNAと結合したりする操作を含みます。数千種類の遺伝子を一つずつ、個別に大腸菌に導入したセットは、ゲノムDNAライブラリー、あるいはcDNAライブラリーとして、クローニングの出発材料となるものです。

最近では各種生物由来の非常に多くのDNA配列情報が登録されており、その配列情報を基にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)という技術を用いて数時間で遺伝子DNA断片を増幅させることができます。PCR反応は極微量のDNAを増幅させることができるため、新型コロナウイルスの検出に役立ったことから、一般の人々にも身近な言葉として浸透しました。

<第2章:オミクス解析>

オーム(-ome)という「総体」を表す接尾語があり、gene(遺伝子)に付けるとgenome(ゲノム)となり、細胞内の染色体セットあるいは全ての遺伝子という意味になります。

そのゲノムに関する研究をgenomics(ゲノミクス)と呼び、同様にタンパク質(protein)や代謝産物(metabolite)の総体を研究するプロテオミクスやメタボロミクスと呼ばれる学問分野が登場しました。1990年に始まったヒトのゲノム全体のDNA配列情報を決定する国際的プロジェクトは2001年にほぼ完成しました。

この間にDNA配列を決定する装置が驚異的な進歩を遂げ、当初10年もかかったヒトゲノム全体の配列決定を、現在では1週間足らずで完成することが可能となっています。

<第3章:バイオインフォマティクス>

国際的データベースに登録されている膨大なDNA配列情報を迅速に解析するには、コンピューターによる適切なアルゴリズムの開発が必須となります。

異種生物間の同種遺伝子の比較による進化系統の推定や疾患原因遺伝子の染色体上のマッピングなど様々な手法が確立され、さらにはタンパク質を構成するアミノ酸配列情報を基にタンパク質の立体構造を推定する手法なども進化し、2024年には高度な立体構造を予測するAIの開発者にノーベル化学賞が与えられました。

<第4章:ゲノム工学>

真核生物のDNAはタンパク質との複合体として、染色体という形で細胞核内に収納されています。細胞が分裂する前には必ずDNAの複製が起こり、染色体が2倍に増えるのです。

ヒトの体は約37兆個の細胞で構成されますが、発生の過程で幹細胞が分裂を繰り返し、個々の細胞が特殊化し、それぞれの役割を持った細胞になることを細胞分化と言います。分化した細胞は分裂を停止していますが、そのような細胞に4種類の遺伝子を導入することにより、再び幹細胞に戻すことに成功したのがノーベル賞を受賞した山中伸弥教授です。脱分化あるいは細胞の初期化とも呼ばれる現象は、植物では自然界にもありますが,哺乳類では不可能とさえ考えられていました。

しかし、マウスやヒト細胞で作り出されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、どのような組織の細胞にも再分化できるため、各種薬効試験や再生医療に用いられるようになり、癌治療などへの応用に期待が高まっています。

iPS細胞を再生医療に応用する際に遺伝子操作を導入するために、特定遺伝子の狙った場所を正確に操作するゲノム編集という新しい手法が選ばれるようになりました。ゲノム編集は医療のみならず農学や水産学の分野においても新しい品種改良に応用されています。

<第5章:酵素>

酵素は細胞内の様々な化学反応の触媒となるタンパク質で、個々の酵素のアミノ酸配列を決めているのが遺伝子のDNA配列です。

本講座では酵素の性質、触媒機構、酵素反応についての生化学的知識を学びます。

<第6章:微生物>

大腸菌や乳酸菌などの細菌(バクテリア)は原核生物ですが、酵母や糸状菌(かび・きのこ類)は真核生物なので区別が大切です。また、ウイルスは細胞を持たず、自身での代謝能力がないので非生物扱いとなっています。マメ科植物に寄生する根粒菌は空中窒素を固定して、植物にアンモニアを供給する共生微生物です。

アグロバクテリウムという細菌は植物細胞に自身の遺伝子DNAを送り込む能力があるため、植物細胞の遺伝子組換えによく利用されています。一方、ヒトなどの哺乳類の消化管には腸内細菌が生息していますが、難培養性のものが多いため、個別に培養しないで混合集団をまとめてDNA解析するメタゲノムという手法があります。

<第7章:発酵>

各種細菌や糸状菌は古くから発酵食品の生産に利用されてきましたが、最近ではアルコール生産能力に着目したバイオエタノール生産が持続可能な社会を目指した技術として注目されています。さらに、アミノ酸、抗生物質、ポリマーなどの有用物質生産にも盛んに利用されています。

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