初めまして。物流改革請負人、ロジスティクス・コンサルタントのS.Kと申します。
自動車メーカーで生産管理、購買管理、物流管理などのサプライチェーン・マネジメントに長年携わって参りました。
現在は物流改善支援や物流人財育成、執筆活動など幅広く物流に関連した仕事をさせていただいております。
ここでは、物流改善の要点を書かせていただきましたので、ぜひお読みいただければ幸いでございます。
S.K氏はSAT PROの登録専門家であり、企業研修やセミナー講師としてご活躍されています。
S.K氏のプロフィールを詳しく知りたい方はこちらからアクセスください。
物流改善はとても「美味しい」
突然ですが、皆さんの会社でどれくらい物流コストがかかっているか認識されていますか。
売上高物流コスト比率について毎年日本ロジスティクス協会が会員企業を対象に調査を行っています。その結果を見ると、おおよそ5%程度という数字になっています。
でもこの数字はあくまでも「把握がしやすい物流コスト」だけが対象となっており、実質は8~9%程度と推測されます。この差については一度横に置いておきましょう。
では売上高営業利益率はどれくらいですか。日本の製造業の平均値は4%程度です。会社の規模では大きな差がありませんので、この数字と先ほどの物流コスト比率を比べてみましょう。
仮に物流コスト比率を8%とすると、なんと営業利益の倍の物流コストがかかっていることがわかります。
皆さんの会社の経営者の方は、この事実をご存じでしょうか。もしご存じで何も手を打っていなければこれは経営者の資質が問われます。
物流コストの多くが経費です。ですから1ポイント物流コスト比率を下げればそれがそのまま利益率を1ポイント向上させます。つまり物流コスト改善は会社利益に直結する重要アイテムなのです。
仮に売上高10億円、物流コスト比率8%、営業利益率4%の会社があったとしましょう。この時に1ポイントの物流コスト改善により生み出される金額は1,000万円です。
この分利益が生まれることになります。ではこの金額を売上で稼ぐためにはいくらの売上高が必要でしょうか。1,000万円÷4%ですから2億5,000万円です。
さて、皆さんがこの1ポイントを生み出せたら賞与を倍増しましょうと言われたら物流コスト改善と営業のどちらかを選びますか。私だったら間違いなく物流コスト改善の方を選びます。なぜなら物流コスト改善は一定の知識と技術があればそれほど難しくなく実現できるからです。
売上を増やすのは極めて難しいと思います。だから物流コスト改善は会社収益向上のためにはとても美味しいアイテムだと言えそうです。
物流改善の狙いどころ
物流のオペレーショナル機能には「輸送」、「保管」、「荷役」、「包装」、「流通加工」、「情報」の6つがあります。この中で最も大きなコストを占める機能が「輸送」です。そして輸送コストに大きな影響を与える機能が「包装」です。
そこで物流コストをダイナミックに改善したければこの輸送と包装改善で実施することが効果的です。
輸送コストは「運賃×輸送距離×輸送荷量」で決まります。このいずれか又は複数を縮めることで輸送コストを削減することができます。特に輸送荷量を縮めるには包装改善を行う必要があります。また特別便のようにイレギュラーで発生する輸送を撲滅することも輸送コスト改善には効果的です。
包装改善を実施して荷物自体を縮めることができれば保管コストが下がります。この「包装」機能は物流の根幹と言えそうです。
メーカーでは工場内物流改善も大切なアイテムです。工場内物流の重要タスクは生産工程に対するサービス水準を向上させることにあります。部品を取る時に肘を伸ばせば取れる位置に部品を届けます。その結果、生産作業者の歩行や部品選択の判断、不自然な動作を無くすことにつながります。
これがどのような効果を生むかはご想像がつくと思います。生産現場の生産性が上がればこれも会社の利益の押し上げにつながるのです。
どうでしょう。少し物流改善をやってみたくなってきたのではないでしょうか。
物流品質向上の効果
メーカーでは長年にわたって厳しい品質管理が行われてきました。その結果、世界でもトップレベルの製造品質を誇るようになったことは疑う余地はないでしょう。
生産工程でつくられた製品はほぼ100%物流を介してお客様の下へと届けられます。この工程における品質のことを物流品質と呼びます。
生産工程で完璧な製品をつくったにもかかわらず、物流工程で何かしたのミスを発生させてしまってはお客様の要望を満たせず、不良と判断されます。
たとえば間違った製品を届けてしまったり、要求された数量を間違えてしまったりすることがあります。これを物流品質不良と呼びます。この不良を発生させないように物流担当者はさまざまな物流品質向上施策を打たなければなりません。
物流倉庫のロケーション表示を工夫したり、数量カウントにひと工夫を凝らしたりすることで見違えるほどミスが減ります。このように物流不良を減らすための技術的な施策はきちんと勉強し、それを会社内に取り入れることが望まれます。
物流作業の標準化と定量化の推進
物流を高品質かつ高効率で実行するために欠かせない取組があります。それが物流作業の標準化と定量化です。
製造会社の方であればよくご存じかと思いますが、標準は必ず標準化し、決められた作業以外の実施を食い止める必要があります。そして決められたペースで作業を実行するために標準時間を設定します。この2つがあって初めて現場管理の実行が可能となるのです。
ところが、多くの物流現場でこの2つが準備されていません。作業のやり方も作業のペースも作業者任せになっているのです。このような状態では物流不良は当たり前のように発生し、物流効率化もままなりません。
そのため、物流担当者が真っ先にやらなければならないことは、物流作業について標準作業と標準時間を設定することです。それに基づいて作業指導を実施し、今の品質と効率のレベルを上げていかなければなりません。
サプライチェーン・マネジメントの実施
私たちは部品を調達し、それを使って加工・組立を行い、お客様へお届けして一連の仕事が完結します。この一連の流れのことをサプライチェーン、それを管理していくことをサプライチェーン・マネジメント(以下SCM)と呼びます。
このサプライチェーンの至る所で物流が発生しています。部品を調達する所の調達物流、加工・組立を行う過程における生産物流、お客様へ製品をお届けする販売物流などがあります。
サプライチェーンにおけるものの流れを清流化する役割は、物流担当者が担います。もしSCMが十分に行われていなかったとしたら、サプライチェーンに在庫という形で淀みが発生します。
たとえば調達部門が市況が安いからと言って今必要でないものまで購入したとすると、それが部品在庫となって滞留します。生産工程が段取りが面倒だと言って本日の計画分以上の生産を行ったとすると、完成品在庫が増えて、容器も不足します。
在庫が増えるとそれを工場内に置ききれなくなり、お金を出して外部の倉庫を借りなければならなくなります。容器が不足すれば暫定荷姿をつくった上でいずれ正規容器に入れ替えが発生します。これらは原則として物流部門がやることになるでしょう。
このようにSCMの特定機能がルールを破った行為を行うと、その影響が物流にあらわれます。ですから影響を受ける物流部署は言われたとおりの物流作業をやるだけではなく、他機能の勝手な動きを食い止めなければなりません。受身仕事から積極仕事への転換が物流には求められているのです。
物流を変えていきましょう
皆さんの会社の物流はどのような状況でしょうか。ぜひ一度会社の物流の状況を把握して、少しでも物流環境を良くしてみてください。
今すぐ行動を起こす必要のある現象は以下の通りです。
一つでも当てはまるものがあるならば即その解消に向けての活動が求められます。
- 物流作業に標準作業書が設定されていない
- 生産工程から供給指示などを受けてから動く
- 在庫置場を見て今の在庫状況が正常か異常かが瞬時にわからない
- 物流のパフォーマンスを数字で表せていない
上記はクリアできているものの次のような現象が一つでもあればさらなる改善が必要です。
- 物流標準時間が設定されていない
- 生産台数に応じた物流所要人員計算ができていない
- 物流生産性を数字で示すことができない
- 物流工程内不良率(流出に至らなかった不良)を計算できていない
- 輸送時のトラック積載率計算ができていない
- 倉庫の保管効率を計算できていない
SAT PROで物流改善を学ぶ
ここまで読んでいただき、物流を変えていく行動が必要であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
大事なことは理解出来たら行動に移すことです。たとえば物流倉庫の保管エリアに表示をつけたりフォークリフトの定位置を定めたりすることはすぐにできることでしょう。では標準時間を設定したりトラック積載率計算を行ったりすることはいかがでしょう。
これらについてやる気さえあれば実行できるという状況であればあとはやるだけで問題はありませんが、ノウハウを知らない場合はそう簡単にはいきません。調べればわかることであれば即調べましょう。それでも調べられないという状況に遭遇することも出てくるかもしれません。
なぜなら日本ではあまり物流を体系的に整理しそれをすぐに現場に応用できるしくみが確立されておらず、独学で解決できる案件ばかりではないからです。
そのような時には躊躇せずに物流改善のプロに頼りましょう。
問題点を認識し、それを解決することが課題であるならばプロに頼んで改善の道筋を示してもらうのです。
一方で何が問題なのかがわからない場合も同様です。プロの力を借りて現場診断を実施しましょう。まずは問題点をあぶり出すことです。冒頭でも触れましたが、日本企業の物流コストは営業利益の倍くらいかかっている可能性があり、
これを放置しておくとなかなか会社利益が向上しづらいからです。物流コスト改善を実行し、少しでも利益向上に寄与したいものです。
SAT PROでは物流にお悩みの皆様のサポートをさせていただきます。日本でトップクラスの物流コンサルタントがご支援させていただき、御社の物流をみるみる改善させていただきます。