SAT PRO

リチウムリオンバッテリを学びたい方必見!|T.H氏

212人の方が、この記事を参考にしています。

はじめまして、エンジニアのT.Hと申します。

スマートフォンやノートPCなどのモバイル機器から電気自動車やハイブリッドカー、蓄電池など、リチウムイオンバッテリは現代の我々の生活には欠かすことができない蓄電デバイスとなっています。

しかし、リチウムイオンバッテリの特徴を理解されている方は少ないかもしれません。ここではリチウムイオンバッテリの特徴とバッテリマネジメントシステムについて解説します。

自己紹介

まずはじめに、私の自己紹介をさせていただきます。

経歴

1989年~2003年
富士通ヴィエルエスアイ株式会社(現株式会社ソシオネクスト)

2004年~2012年
ソニーイーエムシーエス株式会社(現ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社)

2012年~2020年
渦潮電機株式会社(現BEMAC株式会社)

2020年
デルタテックラボラトリ開業

2024年
株式会社設立(法人化)

LSI設計会社に入社し、SCSIプロトコルコントローラ、IEEE1394シリアルバスコントローラなどの特定用途向け汎用品(ASSP)の開発を担当しました。

業務用機器の設計製造会社では、フロントプロジェクター、業務用カメラ用電子ビューファインダー、業務用モニターなどのセット設計、電子回路設計を担当しています。

また業務用モニターの製品開発では、プロジェクトリーダーを経験し、スケジュール、予算、進捗管理などのマネジメントスキルを習得しています。

EV開発会社では、電動三輪車の車両制御ユニット(VCU)設計、車両システム設計、車両性能評価を行いました。

30年以上のエンジニア経験があり、LSI(RTL)設計から電子回路設計、セット設計、車両システム設計まで、幅広い技術領域について高度な知見を有しています。

T.H氏は、SAT PROの登録専門家でもあります。プロフィールをより詳しく知りたい方はこちらからアクセスください。ここからはSAT PROで私がお伝えできることについて紹介します。

リチウムイオンバッテリの特徴

ここからは、リチウムイオンバッテリの特徴について解説いたします。

(1)セル電圧が高い

代表的な二次電池の1セルあたりの公称電圧を下記にまとめてみました。

代表的な二次電池のセル公称電圧
電池名公称電圧
リチウムイオンバッテリ 3.6V
鉛蓄電池 2.0V
ニカド電池 1.2V
ニッケル水素電池 1.2V
吹き出し左側用のアイコン

リチウムイオンバッテリのセル電圧は、鉛蓄電池の1.8倍、ニカド電池、ニッケル水素電池の3倍となっています。つまり、他の二次電池と比べて少ないセル数で高電圧を実現することができます。

(2)エネルギー密度が高い

エネルギー密度とは、バッテリの単位質量もしくは単位容積あたりに取り出せるエネルギー量のことで、単位はWh/kg(重量エネルギー密度)やWh/L(体積エネルギー密度)が使用されます。

鉛蓄電池の重量エネルギー密度が約30~40Wh/kgに対して、リチウムイオンバッテリは約150~250Wh/kgであるため、鉛蓄電池に対してリチウムイオンバッテリのエネルギー密度は約5倍~6倍あります。

吹き出し左側用のアイコン

つまり、バッテリを搭載するスペースは、鉛蓄電池と比較してリチウムイオンバッテリは約1/5~1/6で済むということです。

(3)急速充放電が可能

リチウムイオンバッテリは、他の二次電池と比べて内部抵抗が低いため、大きな電流で充電もしくは放電することができます。

一般的に3C~5C(※1)の電流値を連続で充電もしくは放電することができます。例えば、定格容量40Ahのリチウムイオンバッテリを120Aで充電する場合、約20分で充電が完了する計算になります。

※1 “C”はバッテリの公称容量を表す記号で、1Cとは連続して1時間放電したときに放電終了となる電流値のこと。

(4)サイクル寿命が長い

二次電池は充放電を繰り返すと劣化するため、バッテリ容量が徐々に低下していきます。

1Cの電流値で充電と放電を繰り返した場合、鉛蓄電池は500サイクル程度で電圧が著しく低下し始めます。

リチウムイオンバッテリの場合、使用環境などの違いにより一概には言えませんが、2000~4000サイクルは使用できます(※リン酸鉄系の場合)。

(5)価格が高い

リチウムイオンバッテリの普及を阻む大きな要因は、バッテリ価格にあります。

2010年頃は1kWhあたり約10万円と言われていたため、その頃に比べたら安くはなりました。しかしながら、2020年の時点で1kWhあたり2万円前後であるため、他の二次電池と比較すると高価です。

電気自動車に搭載されるバッテリ容量が50kWh前後であることを考えると、リチウムイオンバッテリだけで約100万円近くのコストが掛かっている計算になります。

その他にリチウムイオンバッテリは過充電もしくは過放電すると、異常発熱して発火発煙の危険性があります。しかしながら、バッテリを正しく制御すれば安全に使用できます。

つまり、バッテリマネジメントが重要になってきます。そこでここからは、リチウムイオンバッテリの制御方法について解説します。

バッテリマネジメントシステムの基礎

バッテリマネジメントシステムとは?

バッテリマネジメントとは、充放電制御やセルバランス制御を行ったり、セル電圧やセル温度、充放電電流を監視したりして、安全にバッテリを充放電することです。

以下にバッテリマネジメントシステムの機能を列挙します。

①センシング機能
・セル電圧、セル温度測定
・充放電電流測定

②データ制御機能
・SOC(充電率)算出
・SOH(健全度)算出

③バッテリ保護機能
・セル電圧、セル温度監視
・充放電電流監視
・充放電制御
・セルバランス制御
・異常検出(フェイルセーフ、システム停止)

バッテリマネジメントシステムは、上記の機能を実現することが目的ではありません。

最大の目的は、上記の機能を実現することによりリチウムイオンバッテリが危険な状態であることを検知して対処することです。これが、バッテリマネジメントシステムの役割になります。

(2)バッテリマネジメントシステムの構成

バッテリマネジメントシステムの理解を深めていただくために、電動車のシステム構成を図示しています。

電動車のシステムは、バッテリの他にバッテリマネジメントシステム(BMS)、車両コントロールユニット(VCU)、インバータ、モーター、充電器などで構成されます。これらの部品は、CANという通信プロトコルを使用してデータを送受信します。

バッテリマネジメントシステムのハードウェアは、マイコンや電池監視IC、電流センサ、接点機構(コンタクタ、リレー)などで構成されます。マイコンと電池監視IC間はI2CやSPIなどのシリアル通信でデータを送受信します。

図で示されているバッテリはバッテリセルが直列に接続されていますが、バッテリの中にはセルモニターユニット(CMU)とバッテリセルでバッテリモジュールを構成することがあります。その場合、セルモニターユニットに電池監視ICが搭載されます。

バッテリマネジメントシステムは、接点機構などを制御して充放電電流を遮断してリチウムイオンバッテリを保護することができます。

しかしながら、車両制御は車両コントロールユニットが行っているため、バッテリマネジメントシステムがバッテリの異常を検知したときは、車両コントロールユニットが車両システムを制御して車両を停止します。

リチウムイオンバッテリについて詳しく学ぶには

ここまでリチウムイオンバッテリに関しての基礎を簡単に解説してきました。もしもっと詳しくリチウムイオンバッテリについて学ぶには、SAT PROがオススメです。

 

『このブログについてお気づきの点等ございましたらこちらにご連絡下さい』

『リチウムリオンバッテリを学びたい方必見!|T.H氏』の記事について

    SNSで資格取得のノウハウを発信しています。

    取りたい資格・知りたいことをお選びください