酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育とは、酸素欠乏症や硫化水素中毒の危険がある場所で作業する場合に、修了が義務付けられている講習です。
対象者はこれらの作業従事者と安全衛生担当者で、危険作業時の労働災害や重大事故を防止する目的で行われています。
本記事では、特別教育の内容や受講の該当条件、申込みの流れや料金を解説します。
目次
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育とは
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育(酸欠等特別教育)とは、酸欠や硫化水素中毒の恐れがある建設業や製造業、清掃業など多くの現場などで、事故を防ぎ安全・衛生的に作業を行うための知識を身につける講習です。
労働安全衛生法では、該当する危険作業に関わる業務に就く労働者は、特別教育を修了している義務があると定められています。
特別教育が必要な理由は、危険度の高さと安全対策の重要性です。建設業や製造業をはじめ、幅広い業種の作業で酸素欠乏症や硫化水素中毒の危険がある現場で労災事故が発生します。
厚生労働省のデータによると、毎年、酸欠・硫化水素中毒の労働災害が少なからず発生しております。これらの事故は、災害にあうと、死亡率が約50%と高い傾向にあります。
<実際の災害事例>
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下記では具体例や症例を紹介しています。
症例 | 業種 | 発生状況 |
酸素欠乏症 | 建築工事業 | 建設現場にて、地下ピット内に溜まった水を排水ポンプで水抜 きしようとしたところ、2カ月以上ピット口を閉じたま密閉状態のた めに酸素欠乏状態であったので、内部に入ったところ酸素欠乏に より死亡となったもの。 |
酸素欠乏症 | 運輸交通業 | 路上に停車中の冷蔵冷凍車の荷台内で、被災者が倒れている ところを発見された。荷台には、アイスクリームや魚介類が積みこ まれており、ドライアイスで保温されていた。 |
硫化水素中毒症 | 清掃業 | 工業用汚水管の洗浄及び調査を行う業務において、マンホー ルの止水栓を開放する作業を行おうとしたところ、栓が詰まって いる状態であったので、マンホールに侵入し、栓の詰まりを解消 したところ、溜まっていた汚水が流れ込み、発生していた硫化水 素により被災したもの。また、救助により二次災害が発生した。 |
【参考1】:厚生労働省 「酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害発生状況」
【参考2】酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害が発生しています
さらに、被災者を救出しようとした人までが同じ症状に巻き込まれてしまうという二次災害のリスクも大きいのが特徴です。
酸素欠乏症や硫化水素中毒は、その場に存在するはずの空気中の酸素が欠乏や希薄化されることが原因のため、気づかないという課題があります。
しかし、現場作業従事者への教育や作業管理の徹底を行い、さらに、AEDを用いた救急救命処置など正しい知識を持つことができれば、死亡リスク削減や労働災害そのものを防止できます。
そこで、この特別教育の趣旨とは、安全対策を徹底するために酸素欠乏症や硫化水素中毒の可能性がある危険作業に関わる作業従事者は、労働安全衛生法にもとづいて酸欠症状等の原因・症状や安全対策の知識を身につけるよう義務付けられているのです。
特別教育の受講義務がある作業従事者と免除資格
酸素欠乏症や硫化水素中毒の危険がある場所で業務をする作業従事者は、特別教育の受講が義務です。当てはまるかどうかを確認するため、具体的な要件を紹介しましょう。
酸素欠乏危険作業の2種類
労働安全衛生法(酸素欠乏症等防止規則第2条)でいうところの「酸素欠乏危険作業」には第1種と第2種があります。
・ 第1種酸素欠乏危険作業:酸欠の危険がある場所での作業
・ 第2種酸素欠乏危険作業:酸欠及び硫化水素中毒の危険がある場所での作業
このうち第2種の酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育は、以下に該当する作業従事者と安全衛生担当者が対象です。
代表的な作業場所には、以下のようなものがあります。
- マンホール・地下水工事
- ピット
- 地下室
- タンク内
- 坑内
これらはあくまでも例で、実際は非常に多岐にわたります。詳しく知りたい方は「労働安全衛生法施行令別表第6」を確認するか、所轄の労働局に問い合わせましょう。
「作業主任者技能講習」は一部・全部が免除される場合も
関連する資格を保有している場合、特別教育カリキュラムが免除される場合があります。
– 酸素欠乏危険作業主任者技能講習
– 酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
前者は、酸素欠乏症のみの知識が主となっており、硫化水素中毒の知識は含まれません。特別教育では酸素欠乏症の科目が免除される場合がありますが、カバーされていない硫化水素中毒の部分については特別教育で学ぶ必要があります。
しかし、後者は、酸素欠乏症だけでな硫化水素中毒の危険がある場所において、作業主任者を選任することができる資格です。講習内容は特別講習と重複しているだけでなく、より充実しているため特別講習は免除されます。
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育の内容とは
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育は実践的な内容ですが、講習そのものは全て座学で、合計5.5時間のカリキュラムです。
科目 | 時間 |
酸素欠乏等の発生の原因 | 1時間 |
酸素欠乏症等の症状 | 1時間 |
空気呼吸器等の使用の方法 | 1時間 |
事故の場合の退避及び救急そ生の方法 | 1時間 |
その他酸素欠乏症等の防止に関し必要な事項 | 1.5時間 |
合計 | 5.5時間 |
発生の原因・症状の科目では酸素欠乏症が発生する原因や発生しやすい場所、症状の危険性や主な症状を学びます。どれも実際の業務を安全に行うために欠かせない内容です。
また、空気呼吸器等の使用の方法の科目では、作業で使用する呼吸用保護具である空気呼吸器、酸素呼吸器、送気マスクなどの装着方法や点検方法を学びます。そして、退避・救急・蘇生の科目では、万が一事故が発生した場合に、応急手当や心肺蘇生やAEDの使用方法などを学びます。
受講・修了する条件として、資格や実務経験は不要で、講習を受ければ修了と認定されます。一部のオンライン講座では確認テストを行うことがありますが、出題範囲は限られているため難易度は高くありません。
特別教育の受講・申込方法や料金は?
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育を受ける方法は主に2パターンあります。
- 業界団体や企業が主催する講座
- WEB講座
業界団体や企業が主催する講座
主催団体 | 申込方法 | 料金 | 備考 | |
協会 | ・建設業労働災害防止協会 | ・電話 | 10,000円前後 | ・カリキュラム5.5時間 |
企業 | ・コマツ |
業界団体とは、代表的なところでは管轄の労働基準協会や連合会、また「建設業労働災害防止協会」「中央労働基準協会」や「中小建設業特別教育協会」といった協会を指します。企業とは、建設メーカー大手などです。
特別教育は全国各地で開催されており、都市圏では1~3カ月おきの頻度で開催されています。地方は数が少なかったり、そもそも開催されていないケースもありますが、その場合は出張講座を依頼することも可能です。申込みは電話・FAXか、またはWEBで受付している団体もあります。
自宅で受講可能なWEB講座
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育は、オンラインでも受講することができます。
カリキュラムには実技がなく座学のみのため、自宅などにいながらでも正式に修了することが可能です。
申込方法 | 料金 | 備考 |
WEB | 8,800円(税込) | 自宅で受講可能 |
講習は1日で終わるとはいえ、参加会場までに足を運ぶのが負担だと感じることもあります。
一方、WEB講座は自宅にいながらEラーニングで受講できる点がメリットです。テキストはデータ形式のため、自宅でダウンロードまたは印刷しましょう。
SATの酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育は
24時間365日、オンラインでの受講が可能!
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酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育についておさらいしよう
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育について
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育は、酸欠や硫化水素中毒の恐れがある現場などで労働災害の発生を防止するために受ける講習です。
建設業をはじめ、製造業や清掃業などさまざまな現場で安全・衛生的に作業を行うために必要になります。
特別教育が免除されるケースは
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育に関連する資格を保有していると、特別教育が免除できる場合があります。
・酸素欠乏危険作業主任者技能講習
・酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
上記の資格のうち、酸素欠乏危険作業主任者の場合は、硫化水素中毒に関しての学習が特別教育で必要です。
一方、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の場合は特別教育と内容が重複しているため、受講が免除されます。
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育の受講方法
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育の受講方法は、主に以下の2つです。
・業界団体や企業が主催する講座の受講
・WEB講座の受講
業界団体の場合、労働基準協会や連合会が開催する講習にスケジュールを調整して受講する必要があります。
一方でWeb講座の場合、自分の好きなタイミングで動画講義を受講できるので、スケジュールを調整する必要がありません。 そのため、これから受講される方はWeb講座での受講をおすすめします。