第一種電気工事士は、それほど難しい資格ではない上に、電気工事の専門業者だけでなく、電気工事が付随する他分野の業種の求人もたくさんあります。
そのため転職が有利になる、資格手当がもらえるなど、高い合格率の割に資格取得のメリットも大きい国家資格です。
今回は第一種電気工事士の合格率や問題の傾向と対策についてご紹介し、次に資格取得した場合の具体的なメリットについてご紹介します。
目次
1 第一種電気工事士試験の難易度と対策
第一種電気工事士の試験の合格率
まずは第一種電気工事士の合格率を確認してみましょう。
・第一種電気工事士の過去の試験の合格率一覧
年度 | 筆記試験 | 技能試験 | ||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
令和元年度 | 37,610 | 20,350 | 54.1% | 23,816 | 15,410 | 64.7% |
令和2年度 | 30,520 | 15,876 | 52.0% | 21,162 | 13,558 | 64.0% |
令和3年度 | 40,244 | 21,542 | 53.5% | 25,751 | 17,260 | 67.0% |
令和4年度 | 37,247 | 21,686 | 58.2% | 26,578 | 16,672 | 62.7% |
筆記試験の合格率は、ここ数年50%以上の合格率をキープしています。
筆記試験の合格条件は、60点以上とることが要件となっています。
技能試験の合格率は60%程度です。
技能試験の合格条件は60分の制限時間で、出題された配線を欠陥がなく、正確に行うことが合格条件となっています。
第一種電気工事士試験問題の傾向と対策
筆記問題の傾向と対策(平成28年〜平成30年)
下表は平成28年〜平成30年の筆記試験の科目別出題数です。
出題傾向科目 | H28 | H29 | H30 | 平均出題数 |
電気基礎理論 | 4 | 4 | 5 | 4.3 |
配電理論、配線設計 | 6 | 5 | 4 | 5 |
電気応用 | 2 | 4 | 2 | |
電気機器、蓄電池 配線器具 電気工事用材料・工具 受電設備 | 12 | 10 | 10 | 10.7 |
電気工事の施工方法 | 4 | 8 | 5 | 5.7 |
自家用電気工作物の検査方法 | 8 | 7 | 8 | 7.7 |
発電設備・送電設備 変電設備 | 1 | 2 | 1 | 1.3 |
保安に関する法令 | 3 | 2 | 3 | 2.7 |
鑑別 | 2 | 0.7 | ||
高電圧受電設備の結線図 | 5 | 10 | 10 | 8.3 |
電動機の制御回路 | 5 | 1.7 |
出題数が多い科目TOP3
1位 「電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用材料・工具、受電設備」
2位 「高電圧受電設備の結線図」
3位 「自家用電気工作物の検査方法」
上記の科目は試験全体に占める出題数が多く、毎年の出題数も多いので、しっかりと学習しましょう。
また、表を見てみると多くの科目が毎年出題されているので、まんべんなく勉強することが大事です。
毎年出題数が1〜3問しかない科目もあるので、勉強時間に制限がある場合には、上記の表を参考にして、どこに注力すべきかを考えて学習しましょう。
計算問題で点数を稼ごう!
計算問題は比較的易しいので、ここで点数を稼ぐことが重要です。
筆記試験の合格点は60点ですので、50問のうち30問とれば合格できます。
「電気に関する基礎理論」と「配電理論・配線設計」の計算問題は約10問出題されるので、すべて正解することが出来たら、残りは20問(全体の1/3)を正解すれば合格することができます。
計算問題以外の問題はテキストや過去問では触れたことのない問題も、出題される可能性が高いので、計算問題で確実に点数を稼げるようにしておきましょう。
技能試験の対策
技能試験については、電気技術者試験センターの公式サイトに、候補問題が毎年10問掲載されます。
候補問題は毎年4月の初旬に一般財団法人 電気技術者試験センターのHPに問題が掲載されます
この候補問題をしっかりと対策しておけば技能試験は、問題ありません。
第一種電気工事士試験の合格圏内に入るために下記を意識して練習しましょう。
・複線図を書かなくても、問題を見ただけで結線が分かること
・作業のスピードを意識すること
・試験センターの「欠陥の判断基準」を意識すること
第一種電気工事士は第2種電気工事士と比べて、とにかく作業量が多いことが特徴です。
作業を早く、正確に行えるだけ練習すれば、自身もつき、余裕をもって試験に臨めるようになるので、しっかりと対策をしましょう。
第一種電気工事士試験の勉強方法
筆記試験の勉強方法
基本的には筆記試験用のテキストや動画教材でしっかりと勉強した後に、過去問に繰り返し取り組むことをおすすめします。
時間に制限がある場合には、最低限、過去問は解いて、出題数が多い科目TOP3と計算問題は確実に勉強しておきましょう。
技能試験の勉強方法
技能対策用の材料を購入し、候補問題の工作物を実際に作ることをおすすめします。
Youtubeなどのネット配信では公表問題の工作手順を無料で視聴できます。ただし、無料で提供されているので誤った内容の場合もあるので、注意する必要があります。
作業時間の目安としては、最後に見直しできるくらいの時間が持てるくらいを目安としましょう。
実務経験を積んでからではなく、試験は早めに受けましょう。
第一種電気工事士の免状の発行には5年以上の実務経験が必要でしたが、2021年令和3年の4月1日から、免状の発行に必要な実務経験年数が3年以上に短縮されました。
しかし、実務経験を3年以上積んだ場合では、今まで以上に仕事の量や責任が増えると予想されるので、仕事をしながら資格の勉強をすることはかなり難しくなります。
さらに、第一種電気工事士の受験資格に条件はなく、第2種電気工事士を持っていなくとも受けることができます。
ですので「第2種電気工事士を持っていない」「3年以上の実務経験を積んでいない」という理由から受けるべきではないと思わずに、早いうちから挑戦しましょう。
2 第一種電気工事士資格取得の4つのメリット
第一種電気工事士は特殊電気工事(ネオン工事・非常用予備発電装置工事)を除くすべての電気工事に従事することができます。
そのため、第一種電気工事士をとることは一人前の電気工事士として認めてもらうための登竜門であり、電気工事業の会社では資格取得を推奨しています。
資格取得によるメリットは下記の4つがあります。
・工事できる範囲が広くなる
・会社から資格手当がもらえる
・転職に有利
・独立することも可能
・工事できる範囲が広くなる
二種よりも電気工事ができる範囲が広がり、一般住宅、店舗などの600ボルト以下で受電する設備から最大500KW未満の工場ビルなどの工事に従事できるようになります。
・会社から資格手当がもらえる
第一種電気工事士を取得したことで手当が増えます。
手当の多い会社ですと20,000円ほどで、少ない会社でも4,000円の収入アップは見込めます。
しかし、支給額についての規則がないため、会社によっては一度「資格取得お祝い金」として受け取ったら終わりの会社もあるので、事前に確認しておきましょう。
・電気系の職業へ転職する際、有利になる
第一種電気工事士を取得すると、転職の際に有利になります。
その理由としては、「目に見える実績」として評価してもらえるからです。
さらに、企業に属する有資格者によって、会社の経営事項審査における技術力の評価において、計上する技術者数にカウントされるなど、入札に関する評価点数というものが上がります。
その結果として一定の点数を満たすと「企業のランク」というものが上がり、公共工事の工事費用が高い工事への入札が可能になります。
つまり、より利益の多い仕事が取りやすくなることから、有資格者である方が企業に優遇されるので、転職に有利になります。
また、電気工事を扱う職種が多いため、選択肢が広がります。
例)電気工事を必要とする職種
・ビルのメンテナンス
・造船の電気関連設備の施工、設備管理
・エレベーターの設置工事
・高速道路の工事
・工場のメンテナンス
・高速道路電気設備の保守・点検業務
・情報通信システムの施工、設備管理
・工場設備の施工、設備管理
以上のように電気工事業の会社のみならず、様々な業種の電気系の仕事に転職することが可能になります。
自分に今の仕事や職場が合わないなと感じる人でも、第一種電気工事士を取得することで、さまざまな業種への転職が可能になります。
・電気工事業で独立することも可能
第一種電気工事士資格は、独立し営業して仕事を取る際に、元請け会社が「仕事を安心して任せられるか」という目安の1つとしても役立つと言えます。
また、前述したとおり、資格を取得することで評価点数が上がるので、利益の高い仕事の入札に参加できるようになります。
社員を雇用する場合には「資格があるか」「資格取得の意思があるか」も検討しましょう。
※資格取得によって評価点数が何点上がるかを確認したい人は、お住まい県の自治体のサイトから確認しましょう。
第一種電気工事士の資格は、持ってないと独立できないというわけではありませんが、独立を考えている人にとっては、ぜひとも取得しておきたい資格です。
3 最後に一言アドバイス
第一種電気工事士の試験に合格するためには、諦めず、着実に勉強を積んでいくことが大事です。
筆記試験・技能試験も、勉強することによって、自分のスキルアップにもつながるため、無駄ではありません。
また、一度で受からなかった場合も数年に1度、合格率が高くなることがあるため、諦めずに挑戦していきましょう。