有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を取り扱う現場責任者に選任され、管理業務へ従事する際に必要な技能講習です。
有機溶剤作業主任者の必要な業種は限られてきますが、所有していなければ現場管理や作業指示ができません。
この記事では実際にどのような職業があるのか、具体的な仕事内容、有機溶剤作業主任者と有機溶剤業務従事者の違いなどを解説しています。
目次
有機溶剤作業主任者とは?
有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を取り扱う現場で現場責任者の仕事を行う際に必要な国家資格です。
有機溶剤は、他の物質を溶かせる有機物全般を指しています。
例えば、建設現場などでよく用いられるシンナーやトルエンも有機溶剤の1種です。樹脂やロウ、ゴムなどは、水でまったく溶けないため、有機溶剤で溶かしたり伸ばしたりします。
有機溶剤作業主任者の仕事内容
続いては、有機溶剤作業主任者の仕事内容について大まかに紹介していきます。
塗装工事
建設業の中でも特に塗装工事は、シンナーを始めとした有機溶剤を高い頻度で使います。例えば壁や床を始めとして、さまざまな場所で有機溶剤を含む塗料を使用します。
有機溶剤を使用しての塗装は溶剤塗装と呼ばれ、色をつけることももちろんですが、コーティングの役割が大きいという特徴を持っています。
溶剤が乾燥すると塗膜を成形し、壁や床などの耐久性を向上させることができます。そのため、有機溶剤を使用しています。
有機溶剤を含む塗料は、幅広い素材や場所に塗装できるため、昔から重宝されています。
そのような塗装を実際に行う現場には、有機溶剤について正しい知識と経験を持った管理者が必要ですので、この技能講習が存在するのです。
自動車整備士
有機溶剤作業主任者は、整備士の中でも板金塗装を行う場合は必須の技能講習です。
車の塗装の場合も建設現場と同じで表面のコーティングがメインになります。そのため、有機溶剤を使用して塗装を行うのです。
ブログ一覧その際に有機溶剤作業主任者の技能講習修了証を持っていない場合は、作業にならないため確実に取得が必須になるでしょう。
他の業務しかしない場合でも車には多くの有機溶剤を使いますので、持っておいて損はありません。
化学工場
有機溶剤は使い勝手のよさもあって、印刷や薬品、薬の工場などでも使用しています。有機溶剤は工業用に使用されているだけで、500種類以上存在します。
そのような有機溶剤を他の材料と組み合わせたり、有機溶剤を制作したりとさまざまな活用法があります。 このように日常的に使われる有機溶剤ですが、中毒を引き起こす可能性のある危険物です。
そのような危険物を扱う場合は、一歩間違えれば大きな事故につながる可能性もあるため、有機溶剤作業主任者を取得している人が現場に必要です。
有機溶剤作業主任者の仕事内容の魅力と大変な面
ここからは仕事の具体的な魅力と大変な面について紹介していきます。
有機溶剤作業主任者の仕事の魅力
有機溶剤は、扱う範囲が非常に広くさまざまな場所で活用されている便利な化合物です。
しかし、現場で扱うには管理者が必要のため、有機溶剤作業主任者の需要も高まっています。ここではそんな有機溶剤作業主任者の魅力について紹介します。
未経験からでも仕事ができる
有機溶剤作業主任者の所有者は、業界未経験でも仕事を始められることが珍しくありません。もちろん実務経験もあれば優遇されますが、有機溶剤を扱う会社側にとって有機溶剤作業主任者の技能講習修了証所有者は必要不可欠です。
未経験で入社して会社から修了証を取得することを命じられて、取得するというケースが多いのもこの技能講習の特徴かもしれません。
このケースですと修了証を取得した後に現場作業員からスタートすることになりますが、社内で現場責任者として昇進も目指せますし、現場経験を活かしてさまざまな業種への転職も見込めます。
有機溶剤作業主任者は、未経験からキャリアアップという手段が取りやすい技能講習ともいえるでしょう。
経験次第で転職も容易
有機溶剤作業主任者は、経験次第で同業他社や有機溶剤に関する別の職種に移ることが可能です。修了証の所有者というだけで転職できるわけではありませんが、転職に役立つ技能講習といえるでしょう。
他の資格と異なり、2日間の短期講習を受講し、修了試験を合格することで取得できます。18歳以上ならば誰でも取得できるため、取得条件も比較的やさしいといえるでしょう。
企業によっては修了証の所有のみでは評価されない可能性があるため、有機溶剤の実務経験は武器です。
つまり修了証と経験の両方を兼ね備えた人は、企業側としても非常に優良な人物として評価しやすいでしょう。
技能講習修了証が必須な作業であること
前半でも触れたように、有機溶剤を扱う現場を管理するためには有機溶剤作業主任者が必須です。 有機溶剤は、液体でなおかつ気化しやすい物質のため、知識のない人が扱えばすぐに中毒症状を起こしてしまう危険な物質です。
そのため、作業現場を統括および適切に安全管理できる専門者が必要であり、事業者が有機溶剤作業主任者を選任しなければいけません。
なお、有機溶剤作業主任者として現場管理を行っている人は、自社の作業者を管理するだけでなく他の業者や元請けとのやり取りも行う場面があります。
現場管理に加えて、取引先との連携を取るのも有機溶剤作業主任者の仕事です。
有機溶剤作業主任者の仕事の大変な面
ここでは有機溶剤作業主任者の大変な面を紹介していきます。これから取得しようと考えている方は是非とも参考にしてみてください。
非常に危険な物質
有機溶剤作業主任者は、作業者と同じく中毒の危険性がある現場で業務に従事しなければいけません。 万が一管理や作業に不手際があると、中毒症状で倒れる危険性もあります。
筆者は、これまで実際に中毒症状で倒れて病院に運ばれた人を何人も見てきました。 身近にあるため忘れがちですが、アルコール類を始めとした有機溶剤はゴムや樹脂といった水で溶けない物質を溶かすことができます。
そのうえ気化しやすく、吸い込みやすいため中毒症状を引き起こします。非常に危険な物質なのです。
仮に気化した有機溶剤が引火してしまえば爆発しますし、皮膚に触れればただれてしまいます。
身近にある物質の反面、簡単に扱ってはいけないということを意識する必要があります。
他の資格と併用が前提になることが多い
有機溶剤は非常に危険な物質で専門的な知識も必要ですが、残念ながらこの技能講習修了証だけでは有機溶剤の保存・管理ができません。
もちろん有機溶剤作業主任者の下であれば有機溶剤を扱う作業に従事できますし、技能講習を修了された方であれば現場の作業管理、安全管理といった現場責任者を担当できます。
しかし、有機溶剤の保存・管理まで行うには、危険物取扱者が必須です。さらに現場管理は経験による技術や判断力も必要のため、技能講習の修了のみでは対応が難しいところです。
そのため、他の資格や実務経験も必要となりやすいのが有機溶剤作業主任者の特徴でもあります。
有機溶剤作業主任者の仕事内容と年収の関係性
有機溶剤作業主任者は専門的な技能講習ですが、年収はどの程度なのでしょうか?ここでは有機溶剤作業主任者と年収の関係性について紹介します。
有機溶剤作業主任者の年収は300万円~650万円程度とかなり幅があります。
なぜなら現場作業員の場合は300万円程度ですが、工場の研究員や人材管理の職種につくと大幅に年収が上がるためです。
有機溶剤作業主任者の仕事に向いている・向いていないを判断するポイント
有機溶剤作業主任者は非常に危険な仕事ですが、その分専門業者という魅力があります。そのような有機溶剤作業主任者に向いている人と向いていない人は、どのような人なのでしょうか?ここでは大まかに紹介します。
向いている人の特徴と判断ポイント
有機溶剤作業主任者に向いている人は、常に危険を意識できる人でしょう。 常に危険物を扱っているという点では、他の業界や技能講習とも性質が少し異なります。
もちろん低圧や高圧の電気、アスベストなども危険です。 しかし、有機溶剤の場合は、混合させる分量や気化しないための保存管理、中毒症状にならないための保護具着用など、細かな安全意識が非常に大切です。
万が一少しでも分量を間違えたり、床にこぼしたりした場合、引火の危険性もあります。
危険であることを冷静に意識できる人は、有機溶剤作業主任者に向いているといえるかもしれません。
向いていない人の特徴と判断ポイント
有機溶剤作業主任者に向いていない人は、すぐ注意力散漫になってしまう人です。
有機溶剤を扱う仕事も、何度もこなすことで徐々に慣れてきます。慣れから油断してしまい、危険物を扱っているという自覚を忘れ、怪我や事故を引き起こすことになるのです。 注意力散漫の方や集中力の続かない方、重要事項を忘れがちな方は要注意です。
有機溶剤作業主任者と有機溶剤業務従事者との違い
有機溶剤作業主任者は、非常に危険な作業ですので専門性が確立されている仕事です。一方で技能講習修了証の入手難易度は決して高いとはいえず、講習と修了試験だけで誰でも取ることが可能です。
なお有機溶剤に関する講習として「有機溶剤業務従事者教育」という別の講習があります。こちらは作業主任者ではなく、作業従事者のための講習です。
有機溶剤作業主任者は国家資格ですが、有機溶剤業務従事者は国家資格ではなく、主任者のように現場の管理者になることはできません。
しかし、有機溶剤業務従事者教育を修了することでも、有機溶剤を取り扱う作業が可能です。
有機溶剤業務従事者は、オンラインの講義でも取得が可能です。オンラインなら好きな時間に受講ができるので、気になる方はサンプル動画をご覧になって受講の検討をしてみてください。