酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者は、酸欠や硫化水素中毒の恐れがある現場で指揮・監視ができるようになる資格です。
作業者を守るための資格であるため、作業中の責任は重大です。
そこで今回は、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の仕事内容について解説します。必要な資格や実施される講習の概要について確認してください。
目次
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の概要
まず、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者がどのような資格なのか、その概要と仕事内容について解説します。講習に申し込む前に必ず確認してください。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者とは?
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者は、酸素が不足している現場や一定以上の硫化水素を含む現場で作業する際に必要な資格です。
トンネルや下水道などの工事は、作業員が酸素欠乏に陥る可能性があるため、換気装置の使用状況を監視して正しい作業工程で実施しなければいけません。
こういった作業を指揮・監視するための資格が酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者です。
講習で取得できる資格ですが、責任が重大であるため、責任感が人一倍に強い方は、酸素欠乏・硫化水素作業主任者向きといえるでしょう。
仕事内容についても確認し、資格の概要を把握してください。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の選任について
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者を含め、作業主任者は、高圧室内作業およびその他の労働災害を防止するために管理が必要とする作業で選任が必要となります。
選任する場合は有資格者の中から選ぶ必要があり、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者が必要な場所は多くあるのが特徴です。
酸素欠乏・硫化水素の危険を伴う現場の例として、以下をご覧ください。
- ⻑期間使用されていない井戶などの内部
- 海水が滞留しくは滞留したことのある熱交換器、管、暗きよ、マンホール、溝もしくはピツト(以下この号において「熱交換器等」という。)または海水を相当期間入れているもしくは入れたことのある熱交換器などの内部
- ケーブル、ガス管その他地下に敷設される物を収容するための暗きよ、マンホールまたはピツトの内部
上記のような場所でも、酸素欠乏だけであったり硫化水素と両方の危険を伴ったりと労働災害発生の原因が含まれます。
そのため、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者を選任して正しい手順で作業することが作業者の安全を守るために必要というわけです。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の仕事内容
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者は、マンホール内や地下道、下水道での作業で活躍する資格です。
作業者が酸欠に陥るのを防ぐため、換気装置の設置や空気の測定装置を整備します。
くわえて、作業者の指導や作業手順の確認も行うため、工事全体の指揮・監視を務めるのが酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の仕事です。
また、現場に応じて保護具も用意をする必要があります。工事は危険が伴うため、適切な判断と指揮が必要です。
大事故を防ぐために、責任を持って作業に従事しましょう。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の講習内容
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者になるための講習は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習」と呼ばれ、学科講習と実技講習があります。
学科講習は、一般講習として酸素欠乏・硫化水素に関する基礎知識や関係法令などを学んだ後、学科試験を受けて合格する必要があります。 場合によって、特別講習を受講しなければならないのも特徴です。
一方で実技講習は、学科講習と異なり、酸素・硫化水素の濃度の測定方法や救急そ生の方法などを実際に道具を使って学びます。
講習の最後に修了試験があるのも酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の特徴です。 ここでは、各講習内容について具体的に解説します。
学科講習の内容
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の講習には、学科講習と実技講習の2種類あります。ここでは学科講習の内容について解説します。
学科講習の概要と受講内容を見ていきましょう。
一般講習 | ||
---|---|---|
受講科目 | 受講内容 | 受講時間 |
酸素欠乏症、硫化水素中毒及び救急そ生に関する知識 | 酸素欠乏症及び硫化水素中毒の病理、症状及び救急そ生 | 3時間 |
酸素欠乏及び硫化水素の発生の原因及び防止措置に関する知識 | 酸素欠乏及び硫化水素の発生原因 | 4時間 |
酸素欠乏及び硫化水素の発生しやすい場所 | ||
酸素及び硫化水素の濃度の測定方法 | ||
換気の方法 | ||
保護具に関する知識 | 空気呼吸器、酸素呼吸器及び送気マスク、墜落制止用器具等並びに救出用の設備及び器具の使用方法並びに保守点検の方法 | 2時間 |
関係法令 | 法令及び安衛則中の関係条項 | 2時間30分 |
酸欠則 | ||
学科試験 | ー | 1時間 |
特別講習※ | ||
受講科目 | 受講内容 | 受講時間 |
硫化水素中毒に関する知識 | 硫化水素中毒の病理及び症状 | 1時間 |
空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生原因及び防止措置に関する知識 | 空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生原因 | 1時間 |
空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生しやすい場所 | ||
硫化水素の濃度の測定方法 | ||
関係法令 | 法令、安衛則及び酸欠則中の硫化水素中毒の防止に係る関係条項 | 30分 |
硫化水素の濃度の測定方法 | 硫化水素濃度測定器の取り扱い | 1時間 |
測定位置の選定 | ||
学科試験 | ー | 1時間 |
※特別講習は酸素欠乏危険作業者技能講習(旧1種)を修了した方と昭和46年9月26日までに行われた酸欠作業主任者技能講習を修了した方が対象です。
上記が学科講習の概要と受講内容です。学科講習の受講後には、筆記試験が行われます。
合格基準は60%以上の正答率なので難易度としては高くありません。講習内容をメモに取るなどして合格するための対策をしてください。
実技講習の内容
先ほどのセクションでは、学科講習の内容について解説しましたが、続いては実技講習について見ていきましょう。
学科講習と同様に講習の概要と受講内容について確認してください。
一般講習 | ||
---|---|---|
受講科目 | 受講内容 | 受講時間 |
救急そ生の方法 | 人工呼吸の方法 | 2時間 |
人工そ生器の使用方法 | ||
酸素及び硫化水素の濃度の測定方法 | 酸素濃度測定器及び硫化水素濃度測定器の取り扱い | 2時間 |
測定位置の選定 | ||
修了試験 | ー | 1時間 |
※特別講習 | ||
受講科目 | 受講内容 | 受講時間 |
硫化水素中毒に関する知識 | 硫化水素中毒の病理及び症状 | 1時間 |
空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生原因及び防止措置に関する知識 | 空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生原因 | 1時間 |
空気中の硫化水素の濃度が百万分の十を超える状態の発生しやすい場所 | ||
硫化水素の濃度の測定方法 | ||
関係法令 | 法令及び安衛則中の関係条項 | 2時間30分 |
酸欠則 | ||
修了試験 | ー | 1時間 |
※特別講習は酸素欠乏危険作業者技能講習(旧1種)を修了した方と昭和46年9月26日までに行われた酸欠作業主任者技能講習を修了した方が対象です。
上記が実技講習の概要と受講内容です。講習は最終日に行われ、修了試験に合格すると修了証が交付されます。
実技講習は、学科講習と違って測定や声出しを実際に行うため、動きやすい服装で臨まなければいけません。
硫化水素濃度や酸素濃度の測定も実施されるので、受講する際は実際に行う作業を具体的にイメージしながら臨みましょう。
講習終了後すぐに修了試験があるため、声出しや測定方法をセットで覚えることが大切です。
また、合格後に受け取ることができる修了証は、受講した機関によって少し見た目は変わりますが、役割としては同じです。
修了証交付後に酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者として作業に従事できるので、講習を通して必要な知識を身に付けてください。
【酸素欠乏・硫化水素】作業主任者技能講習と特別教育の違い
ここまで作業主任者の技能講習について紹介してきましたが、似たような名称で「酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育」という講習があります。
こちらも酸欠や硫化水素が伴う危険な作業に従事する人向けの教育ですが、特別教育の受講対象となるのは実際に現場で作業をする人向けとなります。
一方で、作業主任者の技能講習は、特別教育を受講した従業者を現場で指揮する人のための資格です。
なお、作業主任者も現場作業は可能です。作業主任者は特別教育の上位資格になります。そのため、作業主任者技能講習を受講済みの場合は、特別教育の受講をする必要がありません。
酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育はWebでも受講できる
作業主任者技能講習は終了試験があるため対面式の講習が基本となりますが、酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育に関してはWeb上で受講が可能です。
また、酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育には実技がありません。学科講習のみで全ての受講が完了します。
例えば、SATの酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育では、あらかじめ収録した映像を視聴しながら学科講義を受講できます。
講義映像は途中で止めて、別の機会に続きから再生することも可能ですので、忙しい方にもピッタリです。
作業主任者や特別教育といった資格を取得して、技術者としてのレベルアップを目指してみてはいかがでしょうか。
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酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の概要まとめ
今回の記事では、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の仕事内容と講習の概要について解説しました。
ここまでの内容について、もう一度ポイントを見ていきましょう。
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の概要
NO | 概要 |
---|---|
1 | 資格を取得すると酸欠・硫化水素中毒の恐れがある工事の指揮・監視ができる |
2 | 作業者の指導や作業手順の確認を行う |
3 | 測定器や保護具の設置と整備を行う |
学科講習の概要
NO | 概要 |
---|---|
1 | 2日間かけて実施される |
2 | 筆記試験が行われるため、メモを取りながら受講する |
3 | 試験の合格基準は、総得点の60%以上 |
実技講習の概要
NO | 概要 |
---|---|
1 | 最終日に実施される |
2 | 動きやすい服装で受講する |
3 | 修了試験に向けて声出し確認と実際の作業を意識する |
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の仕事は責任が重大ですが、今の社会に必要な現場の作業指揮を務めるため、需要がなくなりません。