電気工事施工管理技士は、電気工事現場の施工管理を行う国家資格です。
施工管理における技術力を証明する資格ゆえに、試験の難易度がどれくらい高いのか、気になる方も多いことでしょう。
今回の記事では、電気工事施工管理技士の難易度と合格率、試験概要と資格取得に向けた効果的な勉強法について解説します。
目次
電気工事施工管理技士とは?
施工管理は、工程管理・原価管理・品質管理・安全管理の4大管理が主な仕事です。電気工事の高度化が進み、施工管理を的確に行うことが求められます。
そのため、電気工事の施工管理者である電気工事施工管理技士は、電気工学の基礎知識や施工管理技術、電気法規などの専門的な知識が必要です。
資格区分 | 従事できる仕事の範囲 |
---|---|
2級電気工事施工管理技士 |
|
1級電気工事施工管理技士 |
|
上記がそれぞれの資格で従事できる仕事の範囲です。 電気工事施工管理技士の資格は、これらの技術力を持つと証明できるため、施工管理に携わる方は取得することが望ましいといえるでしょう。
試験概要
電気工事施工管理技士の試験概要については、次のとおりです。
項目 | 1級電気工事施工管理技士 | 2級電気工事施工管理技士 | |
---|---|---|---|
試験時間 | 一次 | 午前:2時間30分 午後:2時間 | 2時間30分 |
二次 | 3時間 | 2時間 | |
試験形式 | 一次 | マークシート方式 | |
二次 | 四肢択一のマークシート方式 + 記述式 | ||
出題数 | 一次 | 92問の出題のうち60問を選択 | 64問の出題のうち40問を選択 |
二次 | 出題数5問(全問必答) | 出題数5問(全問必答) | |
合格基準 | 一次 | 60問中、36問以上の正答 | 40問中、24問以上の正答 |
二次 | 正解率60%以上 |
電気工事施工管理技士の受験資格
電気工事施工管理技士の1級と2級では、それぞれにおいて受験資格が定められています。
1級の一次は17歳、2級の一次は19歳以上で受験可能です。二次試験に関しては、1級と2級の一次を合格後に数年間の実務経験を踏むことで受験することができます。
ちなみにこれらの受験資格は令和6年度から適用されたものです。近年の建築業界における慢性的な人手不足を少しでも解消するために、以前より受験資格が緩和されています。
電気工事施工管理技士の合格率と難易度
電気工事施工管理技士の概要、試験の難易度と合格率について見ていきましょう。
電気工事施工管理技士1級・2級の合格率
電気工事施工管理技士1級と2級の過去5年間における合格率は、次のとおりです。
実施年度 | 2級電気工事施工管理技士 | 1級電気工事施工管理技士 | ||
---|---|---|---|---|
第一次検定 | 第二次検定 | 第一次検定 | 第二次検定 | |
令和5年度 | 59.9% | 36.3% | 40.6% | 53.0% |
令和4年度 | 55.6% | 61.8% | 38.3% | 59.0% |
令和3年度 | 57.1% | 50.4% | 53.3% | 58.8% |
令和2年度 | 58.5% | 45.0% | 38.1% | 72.7% |
令和元年度 | 58.7% | 45.4% | 40.7% | 66.3% |
電気工事施工管理技士の合格率は、1級2級共に50~70%前後を推移しています。
資格試験では難易度が高い1級の合格率が低くなるのが一般的ですが、電気工事施工管理技士においては両者で大きな差がないのが特徴です。
合格基準は得点の60%以上と設定されています。 科目ごとに合格基準を設定する国家試験もありますが、電気工事施工管理技士に関しては総得点で合否を判定します。
電気工事施工管理技士と他の電気系資格との比較
電気系の資格には、電気工事施工管理技士以外にも「電気工事士」や「電気主任技術者」といった資格が存在します。
これらの電気系資格における筆記試験と電気工事施工管理技士の一次試験を比較して、電気工事施工管理技士の難易度はどのくらいなのかを見ていきましょう。
年度 | 第一種 電気工事士 | 第二種 電気工事士 | 第三種電気主任技術者 (電験三種) |
---|---|---|---|
令和5年度 | 60.6% | 68.8% | 18.8% |
令和4年度 | 62.7% | 70.6% | 11.6% |
令和3年度 | 67.0% | 71.1% | 11.5% |
令和2年度 | 64.1% | 72.9% | 9.8% |
令和元年度 | 54.1% | 65.9% | 9.3% |
※ 第一種電気工事士、第二種電気工事士、第三種電気主任技術者は上期下期の合計値から算出
上記が電気工事施工管理技士と他の電気系資格の難易度の違いを合格率で比較したものです。
第三種電気主任技術者(電験三種)が1番難しいことを除いて、電気工事施工管理技士と電気工事士の合格率については大きな違いが見られません。
試験の出題範囲を把握し、効率的に学習することで攻略は可能といえるでしょう。 次項で紹介する出題範囲について確認してください。
電気工事施工管理技士試験の難易度
電気工事施工管理技士試験の難易度は、国家試験の中で「普通~やや難しいレベル」と言われています。合格率から見ても、難易度はそれほど高くないことがわかるでしょう。
とはいえ、試験が簡単ということではなく、受験に向けてしっかり勉強しなければいけません。また、電気工事施工管理技士1級・2級の試験範囲は、次のとおりです。
<一次試験>
科目 | 出題内容 |
---|---|
電気工学 | 電気工事の施工に必要な電気工学や電気通信工学、建築学、発電設備、設計図書などの知識 |
施工管理法 | 電気工事の施工計画作成方法、電気工事の施工管理方法の一般的な知識など |
法規 | 建設工事の施工管理に必要な法令の知識 |
<ニ次試験>
科目 | 出題内容 |
---|---|
施工管理法 | 設計図書を理解し、電気設備の施工図の作成、機材の選定、配置などを適切に行う高度な適用能力を問う、記述式の筆記試験 |
このように、電気の知識はもちろん、建築学や発電設備の知識、施工管理の知識など、幅広い出題範囲から問われます。
電気工事施工管理技士試験の勉強方法
最後に電気工事施工管理技士試験の勉強方法を紹介します。幅広い範囲に対応するためには、以下の方法を取り入れると効果的です。
過去問をくり返し解く
電気工事施工管理技士の勉強法は、過去問をくり返し解くことが基本です。
同じ問題をくり返し解くことで得意、不得意な分野を把握し、試験問題に慣れることができます。 過去問を解く際は、間違えた部分の解説を読み、最低でも3回は解くことがポイントです。
より効率的に解きたい方は、間違えた問題を重点的に勉強しましょう。 同じミスを減らし、自分が大丈夫だと思えるまでくり返し解くことで自信にもつながります。
また、過去問のくり返しは問題の解き方が理解できるだけでなく、類似問題が出題されたときの応用力も身に付きます。
ちょっとした過信や気のゆるみが本番で大きなミスを生む可能性もあるため、日々のすき間時間を活用して継続的に勉強しましょう。
ただし、独学はある程度の学力と、勉強のモチベーションを維持することが必要です。
講習会に参加する
さまざまな国家資格の講習会を開催する団体や法人では、合格対策に的を絞った講習を実施しています。 各級、学科、実地と講習がわかれているので、受験予定の科目に絞って受講できます。
講習会に参加する方法に加えて、自宅でネット動画やDVDを視聴することも可能です。 独学で勉強しても理解が難しい方や、短期間で合格したい方は、講習を利用するのも一つの手といえるでしょう。
通信講座で勉強する
通信講座は講習会と同様に、講義を聞きながらテキストを使う勉強法です。1級の学科と実地、2級とコースがわかれていることも講習会と共通しています。
しかし、講習会の会場に参加する場合と比較すると、自分のペースで勉強できる点や、わからない問題を質問できる点が異なります。
講習会は日時が指定されていますが、通信講座なら休日はもちろん、帰宅後や通勤時間も活用できます。
勉強の学習状況の管理や確認問題に挑戦できるEラーニングを導入している通信講座なら、独学よりも計画性を持った勉強が行えるでしょう。
また、講習会では講義を聴くことが目的なので、質疑応答時間が設けられていないケースも考えられます。 通信講座はわからない問題を質問できる環境が整っている場合が多いので、いつでも質問可能だという安心感が得られるのは通信講座ならではのメリットといえるでしょう。
講義はプロのわかりやすい解説が聞けるだけでなく、テキストは合格に必要なポイントを押さえてあるので、独学よりも効率的に対策できます。
費用は講習会とほぼ変わりませんが、長期的に勉強できることを考慮すれば、通信講座を利用する価値は高いといえるでしょう。