ボイラーは温水や蒸気をつくる設備です。
設置される代表的な施設には、病院、工場、ビルがあげられます。また蒸気機関車や船なども、ボイラーを活用していることは見逃せません。これらボイラーの取り扱いを行うのがボイラー技士です。
この記事では、ボイラー技士の第一歩である2級ボイラー技士について、概要から試験内容までまとめて解説します。
目次
2級ボイラー技士とは
2級ボイラー技士はボイラー技士資格の1つです。ボイラーは大変高温・高圧になるため、一歩間違えると爆発などの深刻な災害を引き起こしかねません。
ボイラーのある施設によっては、ボイラー技士の有資格者を配置することが義務づけられる場合があります。このため、ボイラー技士の資格を持っていると就職や転職に有利になることもあります。
ボイラーに関するスキルを持つことを証明するものが、ボイラー技士という国家資格です。
2級ボイラー技士は、全てのボイラーを扱うことができます。しかし、ボイラー取扱作業主任者になるときには制限があります。
ボイラーを設置する施設では、取扱い作業を指揮し監督するボイラー取扱作業主任者を選任する必要があります。
ボイラー技士の資格は、ボイラー取扱作業主任者になれる条件と受験条件により、以下の3種類に分かれます。
級 | 取り扱いできるボイラーの種類 (貫流ボイラー以外のボイラー) | 受験資格 (主なもの) |
---|---|---|
特級 | ボイラーの合計伝熱面積が500㎡以上 | 1級の取得など |
1級 | ボイラーの合計伝熱面積が25㎡以上500㎡未満 | 2級の取得など |
2級 | ボイラーの合計伝熱面積が25㎡未満 | 特になし |
1級と特級の受験資格はそれぞれ下の級を所持している場合以外は少し複雑です。
詳細は1級ボイラー技士はこちらから、特級ボイラー技士はこちらから確認するようにしてください。
2級ボイラー技士になるための試験を受けよう
試験概要
2級ボイラー技士になるためには、筆記試験の合格に加えて、実技講習の修了が必須となります。2級ボイラー技士の筆記試験は、3種類の資格の中で唯一受験資格がありません。
<日程・会場>
公益財団法人安全衛生技術試験協会が、全国7ヶ所にある安全衛生技術センターで月1~2回試験を実施しています。試験の日程は、こちらの公式ホームページで1年間分が公開されています。
このため、あなたの都合にあわせて受験日を選べます。なお試験が実施される各センターへのアクセスはこちらの「本部、各センターのご案内」ページからご確認ください。
くわえて地域によっては、年1~2回程度出張試験を行う場合もあります。試験日程や試験会場は、こちらのページでご確認ください。
<受験料>
現在は、8,800円(非課税)になります。令和5年6月1日以降に値上げされましたのでご注意ください。
試験科目
2級ボイラー技士の試験時間は13:30~16:30の3時間で、試験科目と出題内容は以下のとおりです。
試験科目 | 出題内容 | 問題数 |
---|---|---|
ボイラーの構造に関する知識 | 熱及び蒸気、種類及び型式、主要部分の構造、附属設備及び附属品の構造、自動制御装置 | 10問 |
ボイラーの取扱いに関する知識 | 点火、使用中の留意事項、埋火、附属装置及び附属品の取扱い、ボイラー用水及びその処理、吹出し、清浄作業、点検 | 10問 |
燃料及び燃焼に関する知識 | 燃料の種類、燃焼方式、通風及び通風装置 | 10問 |
関係法令 | 労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令及び労働安全衛生規則中の関係条項、ボイラー及び圧力容器安全規則、ボイラー構造規格中の附属設備及び附属品に関する条項 | 10問 |
<試験形式>
5肢択一式のマークシート方式です。
<合格基準>
全ての科目で4問以上、かつ合計24問以上の正解で合格となります。
受験資格
2級ボイラー技士の筆記試験に受験資格はありませんが、申込時に本人確認証明書(運転免許証や保険証など)の添付が必要です。
そして、試験の合格だけでは免許を受けられません。「筆記試験合格+実技講習の修了」もしくは「筆記試験合格+一定条件における実務経験」が揃って初めて免許を取得できます。実技講習に関する詳細は次の項目でご紹介します。
合格率と難易度
2級ボイラー技士の合格率は令和5年度で54.7%で、過去数年間見ても50%〜60%で推移しています。資格試験としては、特に難易度が高いわけではありません。しっかり準備を行えば、合格できる試験といえるでしょう。
2級ボイラー技士を取得するには講習も忘れずに
ここまで解説したとおり、2級ボイラー技士免許は筆記試験合格だけでは取得できません。
ボイラーの実務経験がない方は「ボイラー実技講習」も受講し、修了証を入手する必要があります。ここからは、ボイラー実技講習の概要や学ぶ内容を確認しましょう。
<会場>
一般社団法人日本ボイラ協会の各都道府県支部などで定期的に実施されています。
<講習日程>
実技講習は3日間行われますが、内訳は学科が2日間、実習が1日となっています。
学科は講義室で、以下の内容を学びます。
番号 | 学ぶ内容 |
---|---|
1 | 燃焼 |
2 | 附属設備及び附属品の取扱い |
3 | 水処理及び吹出し |
4 | 点検及び異常時の処置 |
実習は、実習室や工場において実習用の炉筒煙管ボイラー・鋳鉄製セクショナルボイラーを焚いて、実物を操作して学びます。
学科と実習の順番は地域によって異なりますから、申し込みの際にご確認ください。修了証は講習の終了時に発行されます。ただし必ず3日間全ての受講が必要になりますので、ご注意ください。
講習は平日に3日間連続して行われるため、多くの社会人の方は休みを取るのが大変です。都道府県によっては土日や祝日が1~2日入る日程を選べる場合や、木・金・月の3日間など、土日祝日を挟むパターンもあります。事前に試験スケジュールをご確認ください。
<受講料>
東京都の場合、受講料は24,200円(税込)で、ここから教材費(テキスト代)が必要になります。ただし、都道府県によって少し金額が違うこともあるので、こちらから各都道府県支部のサイトに行って確認するようにしましょう。
実技講習と筆記試験のタイミング
ボイラー実技講習と筆記試験の合格は、どちらが先でもかまいません。
まず筆記試験の合格に集中し、合格後にボイラー実技講習を受講することも1つの方法です。一方で合格後、すぐに講習を受講できるとは限らない点に注意が必要です。
支部によっては実習はおおむね月1回の開催の場合もありますが、実は年3回~4回程度の地域も少なくありません。もしタイミングが合わなければ、数ヶ月間は待つことになってしまいます。この点、筆記試験の受験前ならば余裕をもって申し込め、都合のよい時期を選んで受講できます。
テキストには専門用語も多く、読むだけではイメージもなかなかわきにくいものです。実技講習では実習でボイラーを操作できますから、筆記試験にも役立ちます。
このためボイラーを扱った経験がない方は試験前に実技講習を受講すると、筆記試験の合格とスムーズな資格取得につなげることが可能です。
2級ボイラー技士はボイラー技士の「登竜門」
2級ボイラー技士はボイラー技士を目指す方にとって、最初の登竜門となる資格です。実務経験のない方でも試験の合格とボイラー実技講習の修了で、資格を取得できます。ボイラー実技講習ではボイラーの実物を操作する実習もありますから、机上だけでは得られない学びも得られます。
しっかり準備を行えば、難しい試験ではありません。国家資格に挑戦されたい方やボイラーに興味がある方は、この機会にぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。